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[昼130] 微調整 がらがん 2003/07/15(Tue) 16:24 [返信]

高性能で名高い米GE社製タイムマシンでさえ、時空軸調整には毎日曜日12時2分15秒に一定して日本方面から特定周波数で観測される「全国の行楽地では」というコードが使用されている。

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[昼129] Re[昼118] [昼113] : 合理主義 しーもす 2003/07/15(Tue) 15:29 [URL] [返信]

「よくお聞き、シンデレラ。決して12時を過ぎるまでお城にいてはいけないよ。
 12時を過ぎると魔法が解けて、お城の前に停めた馬車は消え、代わりにそこにチョークで
 「名古屋58え51-37 ダイハツミラ レッカー移動 中警察署に出頭してください」と書かれ、
 保管所へ行くとレッカー代14,000円と保管料450円を取られ、
 2点の青キップ切られて15,000円の反則金納付書を渡されるからね」

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[昼128] 真説シンデレラ物語 とびを 2003/07/15(Tue) 13:44 [返信]

家来「シンデレラ様をお連れしました」
王子「おお! あなたはまさしくあの夜の・・・。
   なぜ12時に消えておしまいになったのですか?
   いや。過ぎ去ったことは聞きますまい・・・。
   しかし、あぁ。あの甘美な記憶が鮮やかに蘇ります。
   さぁ、思い出のこのガラスの靴を履いて。
   えぇ、片方は急ぎ作らせました。
   二人だけの舞踏会を、いざ」

2時間後。

王子「おや? もうこんな時間か。
   今日は私のわがままを聞いてくれてありがとう。
   よろしければ毎日お付き合い願えれば嬉しいのですが」
シン「え? え、えぇ、かまいませんけれど・・・。
   はっ。 それはもしかしてわたくしにプロポ・・・」
王子「いいんですかっ! 
   それはそれはそれはかたじけない。
   では、夏の間は毎日迎えをやりますので
   この城に16時着、拘束約2時間ということで宜しく。
   誰か! シンデレラ嬢がお帰りだ!」
家来「ははっ。
   シンデレラ様、ガラスの靴は王子様にお渡し下さい。
   お帰りはこちらです。ささ、早く早く」

シンデレラが退室して3分後。

王子「何をしておる! ビール急げ!」

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[昼127] 最初 Shi.Ma.Chu 2003/07/15(Tue) 12:55 [返信]

モグタン(以下モ)「あれー。お姉さん何やってるの?」
お姉さん(以下姉)「お昼ご飯作ってるのよー。できたらモグタンにもごちそうしてあげる」
モ「わー」

(略)

姉「もー。どうして12時なんてできたのかしら」
モ「よーし、それじゃあ、今日は12時のはじめてを見てみようか」
姉「うん。行く行くー」

呪文

(略)

姉「あれー。ここはどこ」
古代インド人の羊飼い(以下未)「ここは古代インドです」
ロングおじさん(以下ロ)「そうなんだ。詳しい記録は残っていないけれど、
 12時を発見したのは古代インド人だといわれているんだよ」

(略)

古代インド人の羊飼い、羊を連れて谷間に行く。そこには午の大群が!

未「うわー。初めて見る午が、あんなにたくさん」
ロ「たぶん。こうして正午12時が発見されたんじゃないかな。
 それまで、人類はみんな24時間制の時間を使っていたんだ。
 この12時の発見で、1日を午前と午後の2つに分けるという考え方ができると、
 12時は世界中に広がっていったんだ」
モ「よーし。それじゃあ次は12時の改良を見てみよう」

(略)

アウグスティヌス(以下ア)「うーん。弱った」
姉「おじさん。どうしたの?」
ア「12時のおかげで、一日の時間がすごく分かりやすくなったのはいいけれど、
 みんなが、勝手に好きな時を12時にするようになってしまってね。
 もう、会議とか全然集まらないんだ。このままじゃあ、我が国は滅びてしまうよ」
姉「えー。12時を好きな時間に決められるの?」
ロ「そう。12時という言葉は世界中に広がったけれど、当時は決まった時間を12時に
 するという制度はなかったんだ。それでは困るというので、みんなが同じ時間を12時にして、
 お互いの時間を通じやすくするようにと決めたのが、ローマ皇帝アウグスティヌスなんだ」

アウグスティヌス偉そうにうなずく。

ア「そう。時間の統一のおかげで、ローマ帝国も大繁栄」

(略)

ロ「今では、時計の改良も進み、世界中の人が同じように一日を12時間制で暮らしているんだ。
 もちろん、地球は丸いから時差があるけれど、そういった1時間ごとのズレも
 みんなが同じ12時を使っているからとても簡単に直すことができるんだよ」

モ&姉「ただーいまっと」
姉「うーん。やっぱり12時って大事ねえ」

(略)

姉「あー。すっかりお昼ご飯作るの忘れちゃった。ごめーん。ごちそうはなしね」
モ「ありゃー」


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[昼126] ゴゴゴゴババババババジョジョ やゆよ 2003/07/15(Tue) 12:15 [返信]


ズンズンガガガガガガズンガガガガガガドンドンドンギュルギュル
ギュルドジュペボガジョンドジャパンゴレンドンズズバズバジョジ
ョロジョロジュルルルルルルルゴパパパパパパンジョツンツンツン
ツガガガガガガンズンズンズンドンドンドンギュルギュルギュルド
ジュペボガジョンドジャパンゴレンドンズズバズバジョジョロジョ
ロジュルルルルルズコンガゴルルルルパパパパンジョツンツンツン
ツンガガガガガガズルッズルッゴパパパパパンジョルルルルルルル
ルツンツンズンズンガガガガガガガガガガガガズルッズルジョロズ
ルッズルジョロガガガガガガジョロジュルルルルルル――――『本
当は恐ろしいシンデレラ』では、日付が変わる瞬間に鳴り響いた音
が克明に再現されている――――ズンズズバズジュルパパパンジョ
ツンツンツンツガガガガガガンズンズンンドンギュルギュルギュル
ドジュペボガジョンドジャパンゴレンドンズズバズバジョジョロジ
ョロジュルルルルルズコンガゴルルルルパパパパンジョツズンドン
ドンドンギュルギュ――――このあたりでネズミが化けていた馬の
内臓がすべて裏返しとなった――――ルギュルドジュペボガジンド
ジャパンゴゴレンドンンッギュンッギュンッギュズズバズバペボガ
ジンドジャパンゴゴレンドンンッギュンッギュンッギュズズバズバ
ペボガジンドジャパンゴゴレンドンンッギュンッギュンッギュズズ
バズバジョジョロ――――このあたりでシンデレラの耳から黄土色
の粘液があふれ出た――――ジョロジュルルルルルズコンガゴルル
ルルパパパパンジョツンツンツンツンガガガガガガズルッズルッゴ
ルルルンズンズンガガガガガガガガガガガガズルッズルジョガガガ
ンズンズンンドンギュルギュルギュルドジュペボガジョンドジャパ
ンゴレンドンズズバズバジョジョロジョロジュルルルルルズコンガ
ゴルルルルパパパパンジョツズンドンドンドンドンギュルギュ――
――この瞬間、そばで様子を見ていた王子様は運命の赤い糸の存在
を感じた――――ロズズズズルッズルジョロガガガツンツンツンツ
ンツンツンガガガガガガズルッズルッゴパパパパパンジョルルルル
ルルルルツンツンズンズンガガガガガガガガガガガガズルッズルル
ッズルルッズルジョガガガズズンズ――――こうしてシンデレラは
王子様とともに末永く幸せに暮らしましたとさ――――ドンドンギ
ルュルギュルギュルギュルギュルギュルギュルギュルギュルギュル
ギュルルルルギュルドジュペボガジョンドジャパガガガババババン



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[昼125] その直前 玄界灘男 2003/07/15(Tue) 11:26 [URL] [返信]


「そろそろ行くか・・・?」

昨夜からの雪はすでに降り止んでおり、表に出ると月は煌々と新雪を照らしていた。
忠左衛門は息子の沢右衛門を促した。たった今後にすることになった家は仮住まいである。世帯
道具は裕福なものとはいえない。しかし、こざっぱりと掃除されていた。今まで住んでいたもの
の記憶すら消すように整理されていた。

「・・・はい。」

元来無口な息子である。その上に明日は多分ない身である。朗らかであろうはずがないが、
それでも微塵も臆するところが無いのは、天晴れな偉丈夫である。吉右衛門はわが息子ながら気
持ちの清清しいものを感じた。

「人間、死ぬと覚悟を決めると年齢ではない何か威厳のようなものが生まれる。この俺にもそん
なものが感じられるのだろうか?」

忠左衛門はそんなことを考えながら、踏みしめる者とてなかった新雪の音を聞いていた。
さくさくと軽い音を立てながら、新しい草鞋の跡を残しながら、たった二人分の足跡は進んでい
く。突然忠左衛門は振り向くと後をついて来る息子に声をかけた。

「おい、沢右。お前腹は減らんか?」

沢右衛門はびっくりしたような顔で立ち止まると、またゆっくりと並ぶように歩を進めた。

「はい。そういえば小腹が・・・。」
「亀田屋に行って、そば切りでも食していこう。まだ幾ばくか猶予がある。」

忠左衛門はそういうと、なんとはなしに「そば切り」に「最期の」と付けそうな自分を感じてい
た。

両国橋向川岸町亀田屋は今に残る。赤穂の浪士が打ちそろってそばを食べたという話は史実では
ないが、それを望む庶民の声が史実を許さない。事実は忠左衛門親子を含む七、八人がそば切り
を食った、ということである。

忠左衛門は息子を促すと暖簾をくぐった。
先に来ていたであろう同志が目で挨拶をする。みな無口である。

「ああ、これだけの人間が数刻先には命のやりとりをするのだ。」

忠左衛門にはなんとはなしに、今のこの静けさが偽りのような気がした。誰かが大声を出せば自
分も大声を出し、誰かが泣き出せば、自分も憚らず泣き出すような、それが本当のような気がし
た。しかし、それは起こらないことも重々承知していた。

「・・・・・・今年も暮れますね。」

時刻は子正刻(現在の12時頃)である。丑正刻までに安兵衛の家で合流すれば、その後はもう静
かな時間はないだろう。ましてや「来年」など忠左衛門には考える余裕が無い。
吉良殿の皺首ひとつにわれらも吉良家中も上杉も世間も翻弄されている。何十人、何百人が「武
士の意地」で角突き合わせている。滑稽だがその滑稽さは残酷な結果にいたる滑稽さである。忠
左衛門はそんな考えを捨てきれなかった。
そんな親子が来年の話をしている。それもまた滑稽である。

「ああ、暮れるの。」

忠左衛門はそれだけいうと、箸の先で弄んでいたそば切りを口に入れた。

忠左衛門は箸を置くと息子に声をかけた。

「さて、どうだ?食い終わったか?」
「はい、未だ・・・・・・。」

見ると沢右衛門の椀には三分ほどのそば切りが残っている。すっかり冷え切った椀の中身を沢右
衛門は少しずつ口に運んでいた。その手は心なしか震えている。

「・・・・・終わったか?」
「・・・・・未だ。」

「終わったか?」
「未だつゆが少々。」

「終わったか?」
「いや、まだほんの少々。」

「終わったか?」
「いや、・・・・・・まだ葱が。」

「終わったか?」
「・・・・・・・・・・・。」

沢右衛門は意を決したように箸を置いた。

「・・・・・・・終わりました。」

その目には達観ともあきらめともつかぬものがあった。終わってしまった時間が空の椀と箸に漂
っている。それは沢右衛門の絶望とも取れる空虚さである。
ふと周りを見ると同志の面々もゆっくりと、とてもゆっくりと箸を進めているのが判った。

「そうか、・・・では沢右。・・・・わしゃもう一杯食ってもいいかな?」

忠左衛門の目の前でまず息子がゆっくりと右肩から崩れた。右後の席の同志もゆっくりと宙を飛
んだ。左の席の同志が椀の中に顔を落とした。その前の席の同志はおびただしいほどの茶のしぶ
きを口から噴き出した。店の主人と女将が障子を突き破りながらゆっくりと土間へと転がり落ち
た。全てが忠左衛門の目にはゆっくりと、時間が止まっているかのように見えた。

討ち入りは数刻先に迫っていた。


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[昼124] (削除)  玄界灘男  2003/07/15(Tue) 11:22

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[昼123] 時効 腹黒河 2003/07/15(Tue) 10:30 [URL] [返信]

 平成15年7月7日午後12時、K警察署の一室に掲げられた「安井さん宅連続新聞窃盗事件捜査本部」の看板が外された。看板を外したのは、専従捜査班班長の池田敬二警部だった。多くのフラッシュが焚かれる中、池田さんは私たち記者たちと目線を合わせようとしなかった。ただ、6年前よりも白髪の目立つその池田さん風貌が事件の重さ、捜査官たちの無念さを物語っていた。事件発生の6年後、その大胆な犯行が話題を呼んだ「安井さん宅連続新聞窃盗事件」の時効が成立した。

 事件が起きたのは、平成9年7月8日雨の朝だった。いつものように、安井慎哉さん宅の長男智也さん(当時10歳)が新聞受けに行ったが、新聞が入っていなかった。遠くのニュータウンの建売住宅、駅前に建設中の高層マンションと、近所でも「不味くて潰れるのは時間の問題」と評判のラーメン屋の単色刷りで「200円ラーメン」と書かれた広告だけが残されていた。はじめは、新聞配達員が配達し忘れたのかと思い、配達所に電話をかけたが配達員は確かに投函したという。配達員は、安井さん宅が担当する区域の最初だから絶対忘れないと言い張った。しかし、新聞は次の日も抜き取られていた。

「犯人の手際は見事でした」
 ある捜査関係者は当時を振り返って言う。
「新聞の他に、近所のスーパーの広告、ディスカウント店の広告など生活と密接に繋がるチラシも抜き取っていました。酷いときになると、経済面、株式面、投書など興味のない物をそのまま残していました。下らない天声人語などは、わざわざハサミで切り取って残す念の入れようでした」
 それを犯人はものの数分で行ったという。
「新聞が配達され、智也君が新聞受けに来るまで、ジョギングや犬の散歩などで安井さん宅前を通られたのは、数分間間隔でした。その数分間に犯人は堂々と行った。犯人はそのスリルすら『楽しんで』いたとしか思えない」

 警察が警戒を強めても新聞窃盗はやまなかった。事件後、安井さんに襲い掛かったのは、新聞関係者たちの心無い行為だった。契約の約款を理由に、読んでもいないのに、新聞の購読料を請求した、ASAのスタッフ。さらには、「下の者が門の前に立って命をかけて守る」と街宣車による警備を打診した産経新聞の営業マン。挙句の果てには、「うちなら絶対に盗まれることはない」としんぶん赤旗や聖教新聞の勧誘員まで来た。

 事件は、マスコミにも大きく取り上げられ、少年犯行説、「他の新聞の配達員が自分たちのシェアを増やすために取った」との新聞業界犯行説、宇宙人の地球人文化調査活動ではないかとする宇宙人犯行説など混乱の一途を辿った。混乱に拍車をかけたのは、地元コミニティーFM局「わおFM」に送られた、犯行声明分である。
「おれは しんぶんを とるのが ユカイでならない」
の一文で始まる約800字の文章は、K市をさらなる恐怖に陥れるのは十分だった。犯行は約一ヶ月続いた翌月8日、再びわおFMに送られた「まいにち あさはやくに おきるのが つらくなった」などと書かれた一方的な犯行終結宣言が投函されるまで続いた。その後、犯行はふつりと途絶えた。

「無念です」
 記者会見で池田警部は言った。
 時効直前、捜査陣が注目したのは、犯人が興味を示さなかった紙面や広告だった。傾向の示す答えを大阪府警科学捜査研究所にプロファイリングを依頼した。それは最後の賭けだった。しかし、科学捜査研究所は、母集団となる模倣犯の検挙状況からみても、絞込みが難航した。
「(犯人の)性別すらわからない。せめて、当時の捜査陣に、安井さんの郵便受けに裏ビデオと『日ペン美子ちゃんのペン習字』のチラシを入れる発想があれば……」
 ある科捜研研究員は、このように呟いた。結局、科捜研は、「15歳以上の保守的な思想の持ち主」という玉虫色の犯人像しか描けなかった。捜査陣の最後の賭けも気泡に帰した。動員された捜査員およそ40万人、取調べを受けた人数は、のべ1万人にものぼった。
 安井慎哉さんは本紙の取材に対し、「時効の成立は本当に残念です。マスコミの皆さんには、本当のところ、もうそっとして欲しいというのが本音です」とのメッセージを発表した。

* * *


 時効成立の直前、私は事件のあった安井さん宅の通りを歩いた。犯行推定時刻の事件の起こった通りは私立大学が近く、朝練の為か大学生の通行も多かった。既に、安井さんは衛星都市の生活を離れ、都心近くの高層マンションに転居したそうだ。
 通りは、あのときのように雨で濡れていた。公園に傘をさした犬を連れた初老の男性がいた。男性はサンダル履きで、近所の住人のようだ。話しかけようとすると、男性は答えた。
「記者さんですか?」
 私は肯いた。男性はふっと息をつき、
「あの事件からもう6年たちましたか」
 男性は犬を撫でながら話した。
「あの月は、新聞屋と甲子園の阪神巨人戦の観戦券で揉めて、一月ほど新聞取るのを止めていたのでよう憶えています……。わたし、関西では珍しい巨人ファンで。……ええ、今年はホンマに辛いですわ。その時、うちの息子に新聞毎朝、駄賃やって買いに行くように頼んだんですわ。讀賣買って来い、と言うのに何故か朝日新聞ばっかりで『アカい新聞なんか買うて来るな』と叱ったんです。でも不思議なことに、スーパーの広告までもらってきて、よう憶えていますわ」
 事件は、地域に未だ癒えない大きな爪痕を残している。

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[昼122] タイムリミット ボイラー室の主 2003/07/15(Tue) 04:58 [返信]

会場は実に賑わっていた。

きらびやかに飾られたホールの中には、有名な作家やタレントの姿も見える。

オーケストラが奏でるワルツと、七面鳥と香水、それに多少の酒の香りが場内を満たしている。

あちらでは名シンガーが歌を歌い、こちらでは超人的なジャグリングが見られ、世界的なマジシャンがショーを行う。

そんな大勢の著名人を前に、料理人たちは自慢の腕を振るう。

大統領が開催した今回のパーティには、実に様々な職種の人間が集い、語らい、踊っていた。



控えめに飾った青いドレスを着た女性が、落ち着きのない目で辺りを見回している。

やがて探し物を見つけたように目を止め、一人の男の方へ小走りに近づき、手を取った。

「なっ何?」

突然、手を掴まれた男は、持っていた鳥肉を落としてしまった。

「何やってんのよ、カズマサ!」

「あっ、ヒロコ姉!」

「食ってる場合じゃないでしょ、馬鹿!」

カズマサの手を引きながら、無声音での会話は続く。

この馬鹿、任務のことを忘れたのかしら!だらしないったらないわ!

彼女はカズマサの20代とは思えない三段腹を見て、ため息をついた。

会場の外の廊下まで連れ出すと人通りはほとんど無く、秘密の相談をするにはうってつけのシチュエーションだった。

「で、用意できてるんでしょうね」

「バッチリっす」

「今が23時35分だから・・・あと25分?」

「はい、0時ちょうどに『ドッカーン』です」



大統領は、臆病(チキン)だった。

今回のパーティもそもそも個人的な事から企画したもので、別にこんなに盛大にする必要は無かった。

ワインを一口すすりながら、ふっと右のテーブルに目をやると、シックなスーツに身を包んだ女性が見えた。

やべ、目があった!

音速の速度で視線をそらし、手首で心拍数を数える。

・・・120。や、やっぱり今日はやめにしようかなぁ・・・。

「なぁ、やっぱりやめ・・・」

言いかけた瞬間、隣にいた秘書が凄まじい目で私を睨んだ。

ダメです。なんのために国民の血税を裂いてまで、こんなパーティを企画したんですか。

今日の12時、時計の音が鳴ると同時に告白すると仰ったのは大統領ですよ。

そのためにエージェントを数十名もぐりこませて、最高のムードとシチュエーションを整えてくれています。

さっきからさりげなく彼女に近づく男を連れ出しているのも、耳のイヤホンから適切な指示を出してくれているのも、大統領の後ろから照明で「後光効果」を与えてくれているのも彼らの仕事なんですよ。。

彼らの働きを無駄にするのですか・・・と彼の今にもあふれんばかりの涙目は語っていた。

大統領の背中を、一筋の汗が伝って落ちる。後戻りはできない。

23時40分・・・あと20分で運命の時が来る。



あ、また目があった。また逸らしてやがる。

大統領の不自然極まりない動きに、伊藤佳織は苛立っていた。

佳織はそもそも人ごみが嫌いだし、うるさいパフォーマンスも偉そうなオッサンも好きではない。

事は三日前、大統領の使いと名乗るものが招待状を持ってきた所から始まった。

彼は大統領の秘書だと名乗った。「もし来て頂けないのでしたら、ここで自害致します」と半泣きで懇願するので、半ば強制的にこの場に呼び出されたように思えてならない。

それにしても、長い。昼の1時から開始だというのに、もう23時を回って・・・ってアレ!?

もうそんな時間!?マズイ!ヤバイ!どうしよう!

あと20分くらいで0時じゃないの!えっ、ちょっと、洒落になんないじゃない!

手早く手荷物をまとめて、佳織は出口へ足を急がせた。

「・・・あの・・・すみません、通れないんですけど!」

なぜか佳織の前に、凄まじい勢いで反復横飛びをする男達が立ちふさがっていた。

「ハァッ!ハァッ!ハァッ!ハァッ!すみませんッ!突然ッ!反復横飛びがしたくなりましてッ!」

「ちょっ、すみません、急いでるんです!」

佳織が男達ともみあっていると、男達の後ろから例の「大統領秘書」が現れた。

「おや、佳織さんもうお帰りですか?もっとゆっくりしていって下さいよ、ねえ?」

「いやっ、あのっ、ちょっと・・・汗くさっ!・・・あのっ、急用がありまして!お先に失礼しますっ!」

「そうですか・・・残念です。そうだ、それなら外までお送りしますよ!それがいい!」

「あっ、結構です!結構ですから!」

佳織の言葉を待たずに、黒服の男達は一斉に彼女を取り囲んだ。秘書が指をパチンと鳴らすと、神輿でも担ぐ様に大統領が運ばれてきた。

「さぁ、大統領閣下がじきじきにお家までお送り致します」



「そろそろずらかるわよ」

ヒロコが振り向くと、頼りにならない相棒はまだ食べることに夢中だった。

「いい加減にしなさいよもう・・・って、ちょっと!なんで大統領が外に出てくのよ!」

「フガ?」

口いっぱいにキャビアをほおばりながら振り返るカズマサの頭を引っ叩き、ヒロコは走り出した。

「あと15分・・・追いかけるわよ、カズマサ!」

出口の近くはすごい人だかりになっていた。その中に、黒服の男達をねぎらう初老の男の姿が見える。

ヒロコの中の記憶回路が、素早く答えをはじき出す。

アイツは大統領第一秘書の田中ね・・・!

「あっ、田中さんおひさしぶりっす、どーも!」

「えっと・・・君は?」

「あ、自分、毎朝新聞のものです、おひさしぶりっす!」

「毎朝新聞の・・・?」

「おひさしぶりっす!」

ヒロコの演技が光る。とりあえず「おひさしぶりっす」って言っておけば完璧である。

「大統領、こんな時間にどちらに行かれるんですかー?」

「ああ、実はね。・・・これはオフレコで頼むよ」

アホな秘書から話を聞き出したヒロコは、突然の事態に困惑してしまった。

大統領を会場から出すわけにはいかない。少なくとも12時になるまでは。

女を追いかけるのが目的なら、その「伊藤佳織」をなんとか会場に引き止めなくては。

「あたしに任せて下さい!」

「は?」

「あたし、伊藤佳織の友人なんですよ。彼女をなんとか引き止めてみせます!」

突然の友人登場に、秘書はおおいに喜んだ。

会場内には様々な仕掛けを用意してあり、外で告白するよりも、絶対に会場でやった方がいいに決まっている。500人を超えるスタッフがスタンバっているのだ。彼らの努力を無駄にするわけにはいかない。

「お願い致します!」

「任せて下さい!」

涙をぬぐって感謝を表明する秘書を残して、ヒロコは伊藤佳織の元へと急いだ。



もうあと10分しかないじゃないの!!

黒服の男達に担がれてた佳織は実に焦っていた。イヤな汗が体中から吹き出してくる。

ヤバイ、ヤバイわこの状況!なんとかして振りほどかないと!!

岩をも砕く佳織の拳で、何度も何度も殴打しても黒服達は手を放さない。彼らの顔面で既に原型を止めている物はない。目の光からは狂気すら感じる。

「なんなのよ!なんなのよチクショー!!」

佳織の叫びに答える様に、パチン、と指を鳴らす音が聞こえた。その音と同時に、黒服達が離れていく。

呆然としている佳織に、青いドレスの女性が手を差し伸べてきた。

「ひっさしぶりじゃん、佳織!」

え?

「ほんとひっさしぶり!元気してた?」

「あ・・・あの、どなたですか?」

なんだこの女。

「ひっさしぶり〜!」

「すみません、私、急いでるのでっ!」

サッと身を翻した瞬間、凄まじい握力で手を握られた。

「何10年ぶりかしら、ひっさしぶり〜!」

この女・・・ただものじゃない。やったろうじゃないの。

「・・・5分で沈めてあげるわ」

「・・・そう。察しがよくて助かるわ」

女たちは10年来の友達のように呼応し、互いの拳を繰り出した。



大統領は、臆病(チキン)だった。

今のうちに・・・。

子供の頃は、忍者になりたかった。俊敏な動き、クールな目、屈しない精神。私に無いものばかりだから、逆に憧れの対象となったのかもしれない。しかし、そんな私にもできる忍術がある!

ぬき足、差し足、忍び足。

果たしてこれを忍術と答える人が何人いるのかは知らないが、大統領は少しずつ、確実に歩を進める。

告白なんて無理だ。だってもう帰りたがってんじゃん!無理無理、無理だってバカ!

逃げ?いいや、違うな。これは戦略的撤退だ!!

「それは正確な表現ではありませんね」

「たっ、田中!」

「みんなを裏切るんですか、大統領」

「だ、だって!」

「だってじゃありません!秘書として私もこんな事言いたくないんですよ!」

秘書の目から涙がこぼれる。

これだ・・・この涙に私は弱いんだ・・・。

「緊急措置をとらさせて頂きます!」

秘書が指をパチンと鳴らすと、轟音と共に重い鋼鉄の壁が天井から生えてきた。それは出口という出口を塞ぎ、会場を大きな密室へと変えた。

「これで・・・もう誰もこの会場からは出られません」



ヒロコのカウンターが佳織の顔面を捕らえた。羽根のように回転して吹っ飛ぶ佳織。しかし、彼女の顔面が地面に到達する直前、彼女は身を翻し反撃へと転じた。低い姿勢からの右のフックが、ヒロコのテンプルを正確に狙う。辛うじてブロックするヒロコ。パンチを受け流しながら、冷たい汗がヒロコの頬を伝った。一発一発が重い・・・捕まったら洒落にならないわね!

ハイレベルな闘いは、鋼鉄の壁が下りる轟音によって幕を閉じた。

唖然とするヒロコと佳織。互いに顔を見合わせ、同時に時計を見る二人。

23時55分・・・あと5分!

「田中さん!なんなんですかこの壁ッ!」

ヒロコは猛然と田中に抗議した。

「ああ、実はね。・・・これはオフレコで頼むよ」

アホな秘書はアホな機能について、実に自慢げに語った。

この扉は核でも壊れないこと。

日付が変わらないと開けられないこと。

実は、オリハルコンという幻の金属でできていること。

聞くなり、ヒロコは駆け出していた。

「カズマサ!カズマサ!どこよカズマサッ!!」



「ぼ・・・ぼくは、きみが・・・すきでフッ・・・すきです」
大統領は、臆病(チキン)だった。

大統領が必死で台本を読み返していると、秘書が焦った様子で駆け戻ってきた。

「大統領!大変です、大統領!」

「今いそがしいんだ。・・・ぼくは、き・・・きみが」

「この会場に、爆弾が仕掛けられていたのです!」

「は?」

「は?じゃなくて!」

太った男と痩せた女が、秘書の後ろから口を出した。

「そこ!今、大統領が座ってる椅子の下よ!」

「早くどけよオッサン!」

椅子をどかすと、確かに時計のついた箱があった。

「え?ちょっ、マジで!?」

「マジでございます大統領!」

「ひ、避難しなきゃ!」

「残念ながら、外へ出ることはかないません!」

秘書の目からは、涙がとめどなく流れている。

「じゃあどうすんだよ!」

「どうしましょう!?」

「カズマサ、早く解除しなさい!」

ヒロコの凛とした声が響く。

「ど・・・どのコード切るんだっけ!?赤?青?黄色?緑?群青色?パープルオレンジ?・・・」

「多いよ馬鹿!!」



佳織の拳は、既に血だらけだった。

いくら扉を殴っても、せいぜいひしゃげるのが関の山だった。

くっ・・・もはや諦めるしかないのか。

時計を見ると、もう1分前・・・23時59分を指していた。

これまでか・・・。

佳織は壁に寄りかかりながらぐったりと崩れ落ち、諦めの面持ちでその時を待った。

間もなく、目を閉じた佳織のまぶたの上に、うっすらと影がかかった。

細く目を開けると、男が・・・大統領が立っていた。

「・・・ぼくは・・・ぼくは・・・」

彼が覚えたてのセリフを言いかけた時、向こうの方で歓声が上がった。

抱き合うヒロコや秘書の笑顔が見える。

そんな風景を見ても、佳織はとても笑う気にはなれなかった。



ボーン・・・ボーン・・・ボーン・・・

12時を告げる鐘が鳴る。

大統領は必死で言葉を紡ぎ出す。

スポットライトは二人を照らし、言葉を発する人間は誰一人いない。選曲はシナトラの「マイウェイ」。

「ぼ・・・ぼくはっ・・・きみがっ」

目をつぶって、息を搾り出す。セリフはマイクが拾い、ステレオからも聞こえてくる。

「す・・・すきでフッ!!」すきでフッ・・・すきでフッ・・・すきでフッ・・・

ステレオのエコーが消えるかと思った時、会場内で大きな悲鳴が上がった。

驚いて目を開けた大統領の網膜には、信じられないものが映っていた。

ビキ・・・メキ・・・ミキ・・・

佳織の顔が変形していく。

モサ・・・フサ・・・

ヒゲが生え、髪の毛も白髪へと染まっていく。

メキャ・・・グキャ・・・

骨格が歪み、巨体へと変貌する。

突然、鋼鉄の壁を突き破り、何か乗り物のような物体が突っ込んできた。

雄々しい鹿のような霊獣が一緒に現れ、佳織を誘う。

いつのまにか赤い服に着替えていた佳織は、誘われるまま乗り物に乗り込んだ。

するとその物体はフワリと宙に浮き、信じられないスピードで夜空へと去っていった。

少しの静寂の後、太った男が囁くように呟いた。

「あぁなんだ。今日は12月25日か。」

そしてまた、彼は七面鳥に手を伸ばした。

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[昼121] Re[昼113] : 非合理的あるいは東洋の神秘 藤山高志 2003/07/15(Tue) 03:39 [返信]


森山 直○朗「さ○ら さく○〜 今、咲き誇る〜」






幹さ
幹さくら
幹さくら枝枝
幹枝枝枝枝    桜
幹さくら          桜

幹          桜
幹さくらさくら
幹枝枝枝枝枝枝枝       桜
幹さくらさくら
幹        桜            桜
幹                          桜
幹 桜

灰かぶり←移動不能_______________________

シンデレラ「12時までにはって、こういうことだったのね……」

梶井基次郎「桜の樹の下には屍体が埋まっている!」

シンデレラ「やかましいっ!」




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