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[70] 指示文書より抜粋 BEE 2003/04/16(Wed) 01:24

確かに同年代の者と比べて,高給を渡しています。

しかし,それだけに品質管理部の仕事は,誰にでも勤まるというものでは無いのです。

我が社幹部の縁故関係者や,県会議員の息子,大口取引先の社長の娘,大物右翼の孫,と言った,背に余る重責に堪えて,眠気に耐え,誇りと使命感を維持し続けることの出来うる資質の持ち主でなければ,我が社の製品を一滴一滴,一日に合計2時間もの間,週に3日も見守り続ける過酷な品質管理部の仕事は勤まるものではありません。

どうか皆さん,自分を省みて,身の丈にあった,ピペットでチマチマとバイエル瓶へ薬液を移す今の仕事を頑張ってください。


       再春館製薬所 広島精製所長 下山田 留夫 


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[69] 故事成語 「蛇足」 しーもす 2003/04/16(Wed) 00:36 [URL]

楚の国で春の祭りがあり、大きな杯にお酒が振舞われました。

ある男が「これを皆で飲むには量が少な過ぎる。そこでどうだろう、
一斉に絵を描き、最初に描き上げた者がこの酒を飲めるということにしては」

すると別の者が「お題はどうする?」と訊いたので、
男は「そうだな、誰でも描けるものにしよう」と答え、蛇を描くことになりました。

皆が酒を飲もうと一心不乱に蛇を描いていると、細長い口髭を生やした男がそれを見回り、
「これは舌が長い方がいい」「うろこの模様はこうした方がいい」などと描き足していきます。
描き足された者は本来の目的を忘れ、変な絵になってしまったことに腹を立てています。

そんな中、最初に蛇を描いた男が杯を掴みながら「私は足まで描くことができるぞ」と言いました。
口髭の男はそれを見て「お前は卑怯者だ!なぜなら、この蛇こそ私の描きたかった絵だからだ」と叫びました。

蛇に足を書いた男と口髭の男が二人で意気投合しているのを尻目に、
祭りの人々は、二番目に蛇を描き上げた男が杯を飲み干すのを称えていました。


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[68] ドーピング GIN 2003/04/15(Tue) 23:02 [URL]

■■■■■ インターハイ 女子走り高跳び予選終了後 控え室 ■■■■■■■



「よくやったぞ、日根野。決勝進出だな」

「ありがとうございます。マイコーチ」

「ところで日根野。高校最後の大会、優勝してみたいとは思わないか」

「勿論!・・・・・・でも」

「うん、正直今のお前の実力じゃ入賞するのが精一杯だろうな。
ただ、お前には限りない可能性がある。ここで優勝して自信をつければ
その才能を一気に開花させられる、俺はそう信じてるんだ」

「ありがとうございます。でも、どうすればいいのか」

「これがある」

「薬・・・・・・・・? ドーピングですか!?」

「この薬を使えば動体視力が15倍に、集中力が30倍に、持久力が
50倍に、跳躍力が100倍に、筋力が120倍に跳ね上がるほか、
呼吸器系統の根本的能力上昇が見込めるんだ。この薬を使えば日根野、
おまえの優勝は間違いだろう」

「すごいっ!・・・・・でも」

「まあ待て、この薬のすごいところはそれだけじゃないんだ。
この薬の最も優れている点はその驚異的な効果にも関わらず、尿にも
血液にもその証拠が残らないところにあるんだ。すごいだろう」

「ほんとにそんな薬が?」

「ああ、間違いない。実際俺も現役時代、一度だけ使ってみたことが
あるんだが検査の結果は陰性だった。その時の大会で俺が出した記録は
非公認ながら当時の世界記録を上回るものだったよ。いまでもしっかり
覚えている。俺が記録をたたきだしたときの観衆のどよめきを」

「優勝できるんだったらなんだってします!」

「ほんとか」

「はい。たとえそれが悪魔に魂を売るような行為だとしても」

「・・・・・・・・・よし。優勝するぞ!」

「はいっ!」





■■■■■ インターハイ 女子走り高跳び決勝 グラウンド内 ■■■■■■



アナ「1回目の試技にはいります、日根野順子さん。扇町第一高校3年」




ひそひそひそ・・・どよそよどよ・・・ひそひそひそ・・・がやがやがや
・・・・ひそひそひそ・・・・どよどよどよ・・・・ひそひそひそ・・・
ひそひそひそ・・・どよそよどよ・・・ひそひそひそ・・・がやがやがや
・・・・ひそひそひそ・・・・どよどよどよ・・・・ひそひそひそ・・・
ひそひそひそ・・・どよそよどよ・・・ひそひそひそ・・・がやがやがや
・・・・ひそひそひそ・・・・どよどよどよ・・・・ひそひそひそ・・・



「なんだ、あの子」「額になにかついてる」「目、じゃない?」
「んなわけないだろ」「あ、まばたきした」「それより背中のあれなんだよ」
「翼、だよな」「まさか」「でもはばたいてるぞ」「雄大だな」「荘厳だ」
「あ、審判、燃えてる」「あの子、火ぃ噴いてたな、みた?」「みた」
「スタートしたぞ」「うわ、禍々しいな」「見てられないわ」
「とぶぞ」「ついにとぶわね」「とんだっ」「すごい」「生えてるからね」
「高いな」「どんどん小さくなっていくわね」「なんせ翼が生えてるからね」
「おいおい、空中停止してるよ」「人間技じゃねえよ」「え、人間なの?」
「あ、バー越えたね」「ああ、完全に越えたね」「空中を歩いて越えたね」
「お、こっちむいて笑ってるよ。なんでだろ」「さあ」「わかんねえや」
「彼女、こっちに飛んでくるわね」「ほんとだ」「やばいな」「やばいね」
「明らかに悪意を感じるな」「よく見るとでかいな」「爪立ててるしね」
「逃げるか」「無理だろ」「いや本当にでかいな」「禍々しいわね」




どーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!!!!!
きゃああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!

















アナ「扇町第一高校、日根野順子さん。179m85cm、成功です」




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[67] 再会 kubo 2003/04/15(Tue) 23:00

「あ、あなた!」

「10年ぶりだな。突然俺のもとから出て行って」

「卑怯な私を許して、あのときは目先の事しか見えなくて
愛より金・・を取ってしまったの」


「そのお陰で君は今や新宿2丁目のナンバーワンなのか」



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[66] パパぁ〜〜〜 流水木 2003/04/15(Tue) 22:56

おいおい、何だよ一体!
何しに出てきたんだよ今頃! え!
信じられねぇ奴だなぁ〜〜
自分を何様だと思ってんだよ! え!
誰がお前に出てこいって言ったんだよ!
いいか! 俺は呼んでねぇぞ!
いきなり来るのは卑怯だろ! え!
今朝は、あんなに来るように言ったのに・・・
顔すら出さなかったぢゃねぇか!
なに考えてんだよ!
昼間だってそうだよ!
そろそろ来るんぢゃないかって、用意してたのに・・・
スカしやがって・・・・
それがなんだよ今頃!
何の前触れもなく、いきなり来やがって!
ふざけるのもいい加減にしろよ!
恥ずかしいと思わねぇのかよ! この卑怯者!
お前なんか・・・ お前なんか・・・


あなた・・・ いい加減に馬鹿なこと言ってないで・・・
さっさと風呂場に行って着替えて頂戴!
ちゃんと体も良く洗ってね! 臭いんだから!
それから、脱いだパンツは洗濯機に入れないでね!
ビニール袋に入れて、ゴミ箱に入れておくのよ!
本当にもう・・・・・
だから、あれほど言ってるぢゃない!
ところ構わずおならをするのは止めてって!
本当にもう・・・ いい歳して・・・・


ご・・・・ ごめんなさい・・・・


パパぁ〜〜 プーさん・・・ プーさん・・・・


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[65] 片想い ろく 2003/04/15(Tue) 21:23

夕焼けに映える帰り道  あなたはいつもの喫茶店
窓の外からあなたのこと じっと見つめていた

私は自分から告白なんかしない 
誰かみたいに手紙など渡さない
あなたが毎週楽しみに見るテレビの放送中 
画面にコンマ数秒で私の顔を差し込む 差し込む
これを何度も続けるの 効果あるまで


朝焼けに光る横顔 あなたはいつも通る道
金田さんちの垣根の中から じっと見つめていた

私は自分から告白なんかしない
誰かみたいにチョコも渡さない
深夜寝静まったあなたの部屋のベッド
手足固定してヘッドフォン 大ボリュームで私の名前 名前
これを何度も続けるの 効果あるまで


           石川ひとみ「まちぶせU」


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[64] マンゾーニ 「芸術家の糞」 梅千代 2003/04/15(Tue) 20:04 [URL]

ピエロ・マンゾーニ Piero Manzoni (1933-1963)
 1933年、イタリア・ミラノのSoncinoに生まれる。1957年、イブ・クライン、ルチオ・フォンタナ、アルベルト・ブッリのグループ展に参加。戦後ヨーロッパにおけるコンセプチュアル・アート、ボディ・アートに大きな足跡を残す。
 彼の代表的作品の一つとして名高いのが、マンゾーニ自身の排泄物を缶に詰め、署名・日付のラベルを貼った衝撃的な作品「芸術家の糞 Artist's Shit」(1961)である。(代表作参照)
 1963年、30歳という短い生涯を閉じた。くしくも、反芸術の旗手・デュシャンの大回顧展(パサデナ美術館)が開かれた年であった。


 代表作】

マンゾーニ 「芸術家の糞」
「芸術家の糞」(1961)
テートギャラリー所蔵
(直径10p 高さ8p)
芸術家の糞 Artist's Shit (1961)
 実生活の「缶詰」には通常、「食べるもの」が詰められている。しかし、この作品の中に存在するのは「食べた後にしか出ないもの」であり、そこに示唆されているのは意味論的な逆転である。
 そこでは、観者の審美眼は徹底的に退けられる。「うんこ」を缶詰・保存するという実用的無意味さの中に、排泄者=芸術家マンゾーニ、すなわち一人の人間としての生々しい痕跡が、刻印されているのだ。
 そして、フロイト的解釈をするならば、それはまさしく芸術家のカタルシスと言えるであろう。
 マンゾーニは、美的な側面への無関心を含意する反芸術ゲームにおいて、芸術家としての逆説的記念碑を打ち立てることにより、その勝者となったのである。



マンゾーニ 「芸術家の尿」
「芸術家の尿」(1961)
ロサンゼルス現代美術館所蔵
(直径10p 高さ8p)
芸術家の尿 Artist's Urine  (1961)
 実生活の「桃缶」には通常、「桃とシロップ」が詰められている。しかし、この作品の中にに存在するのは「桃だけでは物足りず、ついついシロップまで飲みほしてしまった時にしか出ないもの」であり、そこに示唆されているのは意味論的な尿結石である。
 そこでは、観者の審美眼は徹底的に退けられる。「おしっこ」を缶詰・保存するという実用的無意味さの中に、排尿者=芸術家マンゾーニ、すなわち一人の人間としての生々しい痕跡が、放出されているのだ。
 そして、フロイト的解釈をするならば、それはまさしく「砂糖は尿中のカルシウム濃度を上げ、結石の原因となりますので、取り過ぎに注意!」と言えるであろう。
 マンゾーニは、美的な側面への無関心を含意する反芸術ゲームにおいて、芸術家としての逆説的記念碑を打ち立てることにより、通院を余儀なくされたのである。



マンゾーニ 「芸術家の歯垢」
「芸術家の歯垢」(1962)
ミラノ市立現代美術館蔵蔵
(直径10p 高さ8p)
芸術家の歯垢 Artist's Dental Plaque  (1962)
 実生活の「さば味噌煮缶」には通常、「さば味噌煮」が詰められている。しかし、この作品の中にに存在するのは「さば味噌煮に限らず食後に出る、歯にこびりついたネバネバするもの」であり、そこに示唆されているのは意味論的な「歯みがけよ」である。
 そこでは、観者の審美眼は徹底的に退けられる。「はくそ」を缶詰・保存するという実用的無意味さの中に、歯を磨かない者=芸術家マンゾーニ、すなわち一人の人間としての生々しい痕跡が、虫歯菌や歯周菌によってさらに蝕まれていくのだ。
 そして、フロイト的解釈をするならば、それはまさしく「ババンババンバンバン、ハァ〜ビバビバ」と言えるであろう。
 マンゾーニは、美的な側面への無関心を含意する反芸術ゲームにおいて、芸術家としての逆説的記念碑を打ち立てることにより、来週火曜日2:00に歯医者へ予約を入れたのである。



マンゾーニ 「芸術家の頭髪」
「芸術家の頭髪」(1962)
ポンピドゥー・センター所蔵
(直径10p 高さ8p)
芸術家の頭髪 Artist's Combings (1962)
 実生活の「髪の毛が混入したナタデココの缶詰」には通常、「ナタデココと髪の毛」が詰められている。しかし、この作品の中に存在するのは「ナタデココとはぜんぜん関係ないんだけど、洗髪後、排水溝の髪の毛キャッチャーにたまったもの」であり、そこに示唆されているのは意味論的な「気軽にヘアチェック!まずはフリーダイヤル」である。
 そこでは、観者の審美眼は徹底的に退けられる。「抜け毛」を缶詰・保存するという実用的無意味さの中に、薄毛のお客様=芸術家マンゾーニ、すなわち一人の人間としての生々しい痕跡が、ごっそりと詰め込まれているのだ。
 そして、フロイト的解釈をするならば、それはまさしく「髪の悩みは一人ひとり違います。アデランスではあらゆるご要望にお応えできるよう、最適な商品を きめ細やかなバリエーションでご用意しています」と言えるであろう。
 マンゾーニは、美的な側面への無関心を含意する反芸術ゲームにおいて、芸術家としての逆説的記念碑を打ち立てることにより、とりあえず電話をかけてみるのである。



マンゾーニ 「芸術家の息」
「芸術家の息 」(1962)
東京都現代美術館所蔵
(直径10p 高さ8p)
芸術家の息 Artist's Stinking Breath (1962)
 実生活の「八甲田山・ブナ林の空気の缶詰」には通常、「八甲田山・ブナ林の空気」が詰められている。しかし、この作品の中に存在するのは「朝に納豆を食べた日に出てくるもの」であり、そこに示唆されているのは意味論的な「だから、歯みがけよ」である。
 そこでは、観者の審美眼は徹底的に退けられる。「くっさい息」を缶詰・保存するという実用的無意味さの中に、3ヶ月前に予約をすっぽかしてから何となく歯医者に行きづらくなって歯も磨かなくなった者=芸術家マンゾーニ、すなわち一人の人間としての生々しい痕跡が、むせまんばかりに漂ってくるのだ。
 そして、フロイト的解釈をするならば、それはまさしく「ババンババンバンバン、ハァ〜ビバビバ」と言えるであろう。
 マンゾーニは、美的な側面への無関心を含意する反芸術ゲームにおいて、芸術家としての逆説的記念碑を打ち立てることにより、今度こそはと再び予約を入れたのである。



マンゾーニ 「芸術家の体」
「芸術家の体」(1963)
サンタンブロージョ教会所蔵
(直径120p 高さ65p)
芸術家の体 Artist's Body (1963)
 実生活の「鮭水煮缶」には通常、「鮭の死骸」が詰められている。しかし、この作品の中に存在するのは「缶詰の鮭を喉に詰まらせて窒息したもの」であり、そこに示唆されているのは意味論的な「えっ、俺って、死んじゃったわけ?」である。
 そこでは、観者の審美眼は徹底的に退けられる。「死体」を缶詰・保存するという実用的無意味さの中に、鮭の水煮を喉に詰まらせた死者=芸術家マンゾーニ、すなわち一人の元人間としての生々しい痕跡が、納缶されているのだ。
 そして、フロイト的解釈をするならば、「来週で歯医者も終わるはずだったのにな……。どうせなら、キャビアの缶詰でも食って死ねばよかった……」と言えるであろう。
 マンゾーニは、美的な側面への無関心を含意する反芸術ゲームにおいて、芸術家としての逆説的記念碑を打ち立てることにより、その死者となったのである。



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[63] 作家と編集者 くもすけ 2003/04/15(Tue) 20:02


「是非、君のところから出したい新作の構想があるんだが」
「先生、頼むから勘弁して下さいよ。3作連続の夢オチは」



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[62] 探検隊 でっどうるふ 2003/04/15(Tue) 12:57

人類未踏の秘境に謎の人食い原人デブゴンを見た!!

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[61] 商業道徳 玄界灘男 2003/04/15(Tue) 09:54 [URL]


「親方、さっぱり客が来ませんねえ。」
「まあ、最近のテーラーなんてこんなもんだろう。量販店が増えてるしなあ。」
「でも、このまんまじゃ店つぶれちゃいますよ。」
「そんなに厳しいのか?」
「ガス止まってますからねえ。」

チリリ〜ン。

「お、客だ、客。ど、どうしよう?」
「親方何どきどきしてるんですか?接客してくださいよお。」
「い、いらっ〜しゃい〜ませ〜ぃ!」
「何ヘンな節つけてるんですか?」

「背広を一着あつらえたいんですが、いいですか?」

「え、背広・・・?はいはい、背広ですね。」
「親方、何きょろきょろしてるんですか?」
「いや、あんまり長いこと背広っていう単語聞かなかったんで一瞬何のことか判らなかっ
たんだよ。」
「しっ!客に聞こえるっ!」

「あの、忙しかったらまた来ますが・・・?」

「いえ、忙しくはないんですよ、忙しくは。もうここんとこずーっと暇で暇で。」
「この馬鹿っ!客が逃げるだろう!」
「馬鹿たあ何だい、馬鹿たあ。仮にも俺は親方だぞっ!いいか、今から商売の基本という
のを見せてやるよ。あ、いえいえ、こっちのことで。まあ、そちらにおかけください。」
「親方、そんな大きな口たたいて大丈夫ですか?」
「まあ、見てろ。あるとこからとる、ってのが商売の基本よ。客の顔色を見つつ、値段を
吊り上げる、これが商売ってもんだ。」

「あの〜、なんか取り込み中だったら出直しますけど。」

「いえいえ、今参ります。参りますよっと。
 ♪たまに〜ぃ、来た客〜ぅ、逃がしちゃあ〜〜ぁ、ならぬぅ〜〜う。とくらあ。
  これを〜〜ぉ 逃せば〜〜ぁ 首ぃくくりぃ〜。っと。」

「なんかやな歌ですねえ。」

「あ、聞こえましたか?いや、こっちのことですよ。へっへっへ。」

「・・・・・大丈夫かなあ、ほんとに?」

「で、どんな背広がお入用ですか?あ、表彰式用の?へえ、ちょっとお高いですがこちら
の生地などお薦めですよ。ステージ映えしますよ〜。」

「いや、こういうのじゃなくて、もっと普通の生地はないんですか?」

「あ、あ〜あ?お気に召さない?お薦めなんだけどなあ?ちょっとやそっとじゃ手に入ら
ないですけどねえ、この生地。」

「・・・・・まあ、そうでしょうねえ。」

「ちっ!また売りつけそこねた。」

「何舌打ちしてるんですか?もっとちゃんとしたの見せてくださいよお。」

「では、こちらはいかがですか?最上級のフラノです。」

「何だ、普通の生地もあるんじゃないですか。あ、これならいいなあ。でもフラノって高
いんですよね、確か。」

「それ、フラノはフラノですが、北海道の富良野で織ってる生地で・・・・。」
「馬鹿っ!あっちへ引っ込んでろい!へへへ、いやね、あれは親戚の子を預かってるんで
すがまるっきりのカラ馬鹿で。いえいえ、こちらは1着分3万円ですよ。・・・・・・・。」

「それなら予算内だ・・・・、ってなんでご主人僕の顔じっと見てるんですか?」

「いえいえっ!じっとなんか見てません、見てませんって。で、お仕立て代が2万円かか
りましてですねえ・・・・・・・・・。」

「やっぱりじっと見てますよ。ああ、仕立て代ですね、では合計5万円ということで。」

「・・・・・・・・、あ、そうそう、裏地をつけるとあと1万円アップなんですが、どう
されます?いります?裏地・・・・・・・・・・・。」

「・・・・裏地のない背広なんてないでしょう?付けてくださいよ、裏地。」

「では採寸しますのでこちらへどうぞ。へっへっへ。」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「親方、うちってあんなにいろいろと料金ありましたっけ?」
「だからお前はだめだっていうんだよ。お客の顔色見ながら、取れるもんは取る、っての
が基本だろう?現在の構造不況下における生き残り策を模索する中、我々の中小企業の
あるべき姿とはぁ・・・・。」
「まあ、もうかったからいいですよ、これから親方のこと陰で『馬鹿』とか『穀潰し』っ
ていいませんから。」
「お前そんなこといってたのか?まあ、これからが商売の真髄よ。まあ見とけって。」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

チリンチリーン。

「あの〜。仮縫いに来たんですが。」

「お、客だ、客。ど、どうしよう?」
「毎回毎回何どきどきしてるんですか?こないだのお客さんじゃないですか。」
「そ、そうか。いらっ〜しゃい〜ませ〜ぃ!」
「だからそのヘンな節つけるのやめなさいって。」

「え〜と、今日は仮縫いですよね?」

「はいはい、こちらになっております。いい出来ですよお。」

「え?これ?確かにこの間の生地ですけど、袖は?4日後には着なくちゃならないんです
けど?間に合わないと困るんですよ。」

「・・・・・・はい、申し忘れましたが袖つけるとあと1万円のアップなんですが、どう
なさいますかぁ?つけますぅ?お袖・・・・・。」


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