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[30] 太型心理小説「男の戦い」 古賀 2002/06/08(Sat) 20:46
(ナレーション) 男には負けるとわかっていても戦わなければならないときがある。


(くっ!バナナの皮をよけたところに落とし穴……かってベトコンが多用したという初歩的な
トラップにひっかかるとは)
(落とし穴からやっと逃れたところを集中砲火…逃げ場は一箇所だけか)
(しまった!一見普通の地面に見えて実は泥沼…まんまと敵の戦術にのせられた)
(ここは裏をかいて敵の背後に遊軍を送り込み急襲する。攻撃は最大の防御なり)
(急斜面から岩が転がり落ちてきて遊軍は全滅…敵は我軍の動きを寸分の狂いもなく読んでいる)
(こうなっては敵軍の攻撃を持ちこたえながら何とか泥沼から脱出するしか手はあるまい)
(何と!18もある特殊装甲を一瞬に!!長年かけて作りあげた我軍の防壁がこうまで脆いとは)
(このまま何もできずに全滅するのを待つより潔く負けを認め賠償金を支払うことで決着を…敵国も
鬼ではあるまい。しかし敵は我国の経済的基盤をも完全に知りつくしている。これからが本当に
苦しい男の戦いになりそうだ)


「これでいくら下手な言い訳をしても無駄だってことがわかったでしょう?今まであなたが
妻である私を騙しとおしたことや言い負かしたことが1度でもあったかどうか良く考えて
もういいかげんに本当のことを白状なさい。私だって決して鬼じゃないんだから」
「…………ごめんなさい。白状します。浮気してました」
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[29] ストレッシブル てんぽん 2002/06/08(Sat) 04:34
「あかん・・また象や・・」
「クスリは5日もやってへんから・・酒・やな・・の・飲まな・・」

「ひゃああ!あ・あらへん!酒あらへん!」
「ど・どないしょ・・えらいこっちゃ・・え・えらいこっちゃ・・」
「飲まな・酒飲まな・・また飛びよる・象、飛びよる・・」



「はぁ・・ヘアトニックちゅうのも、なかなかいけるもんやな・・象さん消えよったわ・・・・」

「あ?・・あんさん来とったんかいな」
「さぁさ、どうぞどうぞ、上がって上がって」
「えっ?なんも忙しいことなんかあらへん、ワシの相手してくれんのはあんさんくらいや、まあ上がって」
「ヘ・ヘアトニック飲むか?・・灯油もちょっとあんねん、これ吸うたら気持ちようなんねんで」



「あんなあ、ワシなあ、こない見えても商才はあんねん」
「ワシが本気出したらなぁ世界征服ぐらい朝飯前やっちゅうねん」
「なんや?嘘ちゃうで、今まで運が悪かっただけや」

「あぁせや、あんさんワシと組まへんか?せや、それがええわ、ワシらこんなとこでくすぶっとったらあかん!!」
「あんさんは見所ある、ワシこない見えても見る目はあんねん」
「ワシとあんさん組んだらもう怖いもん無しや、向かうとこ敵無しや!」



「と・灯油もう無いんか?・・まあええわ・・・あんな・・狙いはガキや」
「そう、ガキ。まずこいつらを洗脳すんねん」
「ガキは浅はかやからな、ちょっとええとこ見せたったらすぐにこっちになびきよる。ワシらの手下になるわけや」
「そしたら後は簡単や、手下のガキがまたガキ産みよる。手下がどんどん増えていきよんねん」

「そのちょっとええとこっちゅうのをあんさんに手伝どうてほしいんや」

「どや?やってみいへんか?ワシらの城建てへんか?」
「城だけやない、王国や。ワシらの王国造って今まで馬鹿にしてきた奴ら見返したんねん!!」



「そないや、あんさんの名前まだ聞いてへんかったなあ」
「ええっ!無い?名前無いんかいな」
「いや、かめへん、かめへん、したらワシがつけたる」
「せやな・・んーーー・・・」

「ミッキー!ミッキーがええわ、ええ名前や」

「あんさんはほんまに見所のあるネズミや」












[28] 太型透明人間小説「副作用」 古賀 2002/06/07(Fri) 22:18
「助かったよ――ちょうど助けが欲しいと思って飛び込んだところが大学時代の
友人だった君の家とはな――すまんがこのカツレツをもらうよ」
皿のカツレツが宙に浮かぶと椅子の上に置かれたナイトガウン――まるで人間
が着ているかのようにふくらんでいるのに中身はがらんどうの――の方に引き
寄せられた。
「最近世間を騒がせている透明人間の正体――それがグリッフィン、きみだった
とはな」
ナイトガウンの上方でカツレツが端から少しずつ虚空に消えていく不思議な光景
を眺めながらケンプ博士はそう切り出した。
「そうさ。物が見えるのは光線が物体にあたると、吸収、反射、屈折のいずれか
の作用を起こすためだ。僕は三次元の物質を四次元の存在に転化させることに
より、その物質を光の吸収、反射、屈折のいずれも起こさないようにする方法を
発見したのだ。つまり透明人間になる方法をだ――ケンプ、すまんがカツレツを
もう一つくれたまえ」
「僕の皿のをやろう――四次元の存在とは何だね?」
「一言で簡単に説明するのは難しいが――まあ、お化けみたいなものだな」
「なるほど君は自分自身を実験台にして透明人間に――君の言うところのお化
けになり世間を恐怖のどん底に陥れたというわけか」
「それには深い理由があるのだ――まず、最初の段階では自分自身の透明化
をコントロールできなかった。つまり透明の状態から元に戻ることができなかった
のだ――ケンプ、すまんがカツレツをもう一つくれたまえ」
「さっきあげたばかりじゃないか」
「すまんな。透明人間になってからいくら食べてもすぐに腹が減るんだ。これも
透明化に伴う副作用の一つかも知れん――コントロールできないためにずっと
透明な状態でいなければならなかった。そのために包帯を巻いて顔や手足を
隠さねばならず、泊まっていた宿屋の主人に怪しまれた結果あんな大騒ぎを
引き起こしてしまったんだ。そのあと馬鹿な警官やいまいましい犬に追いかけ
られて自分の身を守るためにやむなく……全くあのくそ犬どもときたら!」
「ずいぶんと犬が嫌いらしいな」
「犬は透明になっているにもかかわらず臭いで僕の実体を嗅ぎつけるからな。
そのためにあやうくつかまりそうになった。透明人間も犬にだけは弱いというわけ
だ。しかし今なら解決法がある。――すまんがカツレツもう一つおかわり」
「これでも皮を剥いて食べたまえ――解決法とは?」
「もうバナナしかないのか――この逃避行の最中に僕はこの透明化の状態を自分
の意思である程度コントロールできるのに気がついた。精神を集中することにより
一瞬だが透明化以前の元の状態に戻れるのだ。君の家でしばらく居候をさせて
もらえばそのうち完全にコツをつかみ自由に目に見える状態と透明の状態を行き
来できるようになるだろう。そうなればしめたものさ。僕は思うままにいつでも姿を
消して宙を行くが如くどんな所にも忍び込める人間以上の存在になれるのだ」
「まさしくお化けだな――ところで一瞬だけ元に戻れるといったな。今でも可能かね?」
「可能さ。見せてやろう、――ほら、これが透明でないときの僕の姿だ。若いころ
とは見違えるほどに変ってしまったと思うが……どうしたかね?」
「一つ聞いていいかね、グリッフィン」
「何だい、ケンプ」
「あのう……君の目が目玉焼きみたいで口がテーブルが入るぐらいばかでかくって
頭のてっぺんに髪の毛が三本しかないのもやっぱり透明化の副作用なのかね?」



[27] 太型大逆転小説「反応」 古賀 2002/06/07(Fri) 22:17
「フフフ、どうやら今回は私の勝ちだね明智くん」
「アハハハハハ、まだ気づかないのかね20面相くん。すでに僕の手引きでこのアジトに
はいりこんだ警官隊が君の部下と入れ替わっていることに」
「なにィ、しまった!」


「フフフ、どうやら今回は私の勝ちだね明智くん」
「アハハハハハ、まだ気づかないのかね20面相くん。すでに君が春山家から誘拐した
お嬢さんがぼくの部下の小林少年と入れ替わっていることに」
「なにィ、しまった!」


「フフフ、どうやら今回は私の勝ちだね明智くん」
「アハハハハハ、まだ気づかないのかね20面相くん。すでに君の手の中の拳銃が僕
の用意したおもちゃのピストルと入れ替わっていることに」
「なにィ、しまった!」


「フフフ、どうやら今回は私の勝ちだね明智くん」
「アハハハハハ、まだ気づかないのかね20面相くん。すでに君が手にしている黄金の
仏像がぼくが参拝してきた奈良の大仏と入れ替わっていることに」
「なにィ、しまった!」


「フフフ、どうやら今回は私の勝ちだね明智くん」
「アハハハハハ、まだ気づかないのかね20面相くん。すでに君が乗っている逃走用の
自動車がぼくが食べたバナナの皮と入れ替わっていることに」
「なにィ、しまった!」


「フフフ、どうやら今回は私の勝ちだね明智くん」
「アハハハハハ、まだ気づかないのかね20面相くん。すでに君の秘蔵の『十二歳未満
美少女官能写真集』が小林少年秘蔵の『八十八歳以上裸女かんかんのう写真集』と
入れ替わっていることに」
「なにィ、しまった!」

「フフフ、どうやら今回は私の勝ちだね明智くん」
「アハハハハハ、まだ気づかないのかね20面相くん。すでに君の持っているおにぎり
がぼくの持っている柿の種と入れ替わっていることに」
「なにィ、しまった!」


「フフフ、どうやら今回は私の勝ちだね明智くん」
「アハハハハハ、まだ気づかないのかね20面相くん。すでに尾道のお寺の階段から
一緒に転げ落ちた時に君とぼくが入れ替わっていることに」
「なにィ、しまった!」


「フフフ、どうやら今回はもう絶対に間違いなく神に誓っても100%私の勝ちだね明智くん」
「アハハハハハ、まだ気づかないのかね20面相くん。すでに君がぼくの笑い声を聞くと
『なにィ、しまった!』と反応するように、パブロフ博士の研究所で条件反射の実験台に
されてしまっていることに」
「なにィ、しまった!」
「アハハハハハ」「アハハハハハ」
「なにィ、しまった!」「なにィ、しまった!」
「アハハハハハ」「アハハハハハ」「アハハハハハ」
「なにィ、しまった!」「なにィ、しまった!」「なにィ、しまった!」






[26] (削除)2002/06/07(Fri) 22:14




[25] (削除)2002/06/07(Fri) 22:10




[24] 大型自由研究小説◆『コカコーラで骨はとけるか』 みじお 2002/06/07(Fri) 02:30 [URL]
「4年1組、出席番号17番、玉造宮ヒロミチ。
 夏休みの自由研究発表、『コカコーラで骨はとけるか』を発表します」

天然パーマの玉造宮ヒロミチが、やや緊張した面持ちで、黒板の前に吊り下げた模造紙の発表資料のわきで頭を下げた。
顔は前に向けたままで、あごを突き出すような格好になる、いわゆる「遮断機型おじぎ」だ。
担任教師の虚空蔵寺ネンタロウは、そんなヒロミチの横顔を見ながら、右手に持ったシャーペンをくるりくるりと回した。

「(1)、動機。
 夏は暑いので、コカコーラを飲みます。
 お母さんが、『そんなにコカコーラを飲むと骨がとけるよ』と言ったので、コカコーラで骨がとけるかを調べました」

教室を見渡すと、席についた子どもたちは概ね興味深げに、玉造宮ヒロミチの研究発表に目を向けている。
コカコーラ、という子どもたちにとって身近な話題をテーマに取り入れたのが良かったのだろう。
同じような注意を母親からされた子どもも、たくさんいるに違いない。
虚空蔵寺ネンタロウは、まずまずの滑り出しだな、とそっと微笑んだ。

「(2)、準備したもの。
 コカコーラ。ガラスのコップ。にぼし。
 骨がないので、代わりににぼしを用意しました」

ふんふんなるほど。
誰かの入れ知恵があったのかもしれないが、にぼしを食べて骨を強くしよう! と保健室のプリントにも書いてある。
にぼしイコール骨、という図式をヒロミチなりに考えて、手に届く範囲で代用品を探し出してきたのかもしれない。
ネンタロウは「工夫」の欄に丸を付けた。

「(3)、実験。
 初めに、ガラスのコップに、コカコーラを半分くらい入れました。
 次に、その中ににぼしを入れました。
 最後に、余ったコカコーラは飲みました」

教室からは、ちょっと笑い声がおこる。ヒロミチは、自分がなぜ笑われたのかよく判っていないようだ。
しかし、彼の記述自体は100%正しい。
教育指導綱領にも、「記述は時間軸に沿って、「初めに」「次に」「最後に」と書くようにする」とある。
子どもらしい素直さで、夏休み前の注意をきちんと聞いていたヒロミチの律儀さがよく表れている。

「(4)、観察。
 1日目。変化なし。
 2日目。変化なし。
 3日目。変化なし。
 4日目。変化なし。
 5日目。変化なし」

(模造紙に色鉛筆で描かれたガラスのコップとにぼしの絵は、5つとも同じように赤く塗られている)
(最初の紙が絵でいっぱいになったので、ヒロミチは模造紙をめくって次のページにした)

「6日目。変化なし。
 7日目。3組の刈乃くんが遊びに来て、『コカコーラとちゃうで、ファンタレモンやで』と言ったので、ファンタレモンを入れた」

(コップの絵が、途中から黄色に変わる)

「1日目。変化なし。
 2日目。変化なし。
 3日目。変化なし。
 4日目。腐った」

(絵の中のにぼしが、黒っぽく塗りつぶされている)
(腐ってぐちゃぐちゃになった、ということを表現したいが画力がついていかなかったらしい)

「(5)、結論。
 ファンタレモンで骨はとけないことがわかりました。
 これでボクの研究発表を終わります。何か質問のある人はいませんか」

「はい」
「はい、桜鏡子さん」
「コカコーラに入れておいたら、骨はとけたと思います」

(さんせーい、と一斉に手を上げる子どもたち)
(「評価」の欄に、バツ印を付ける虚空蔵寺ネンタロウ)
(刈乃くんが悪い、と口々に話している子どもたち。このままだと3組に殴りこみに行きそうだ)
(指示棒を教卓の上に戻す玉造宮ヒロミチ)

                                  [完コーラ]





[23] 大型サイエンスフィクション「体育会系年代記」 s・バレット 2002/06/06(Thu) 17:28
西暦2×××年ネオトウキョウ

とある廃ビルの一室

居並ぶ男達は一様に大柄で筋肉質である

立体TVではネオ新宿ネオアルタから生放送中の「ネオいいとも」の司会者ネオタモリがヴァリアブルメタル製に改造された銀色の顔を激しく変形させてネオイグアナの真似している

が誰もそれを見る者はいない

やがてTVがぱちりと消された

「でははじめよう。筋肉向上委員会の諸君」




ネオトウキョウは大戦によって滅びた関東エリア唯一のドームである

サイバースペースを流れるデータが全てを支配するこの都市では過剰に進んだ電脳化が肉体蔑視を生み、体は精神のハードウェアに過ぎないとする思想が蔓延っていた

筋肉向上委員会はそんな堕落した現状を覆すためプロレスラー、ボディビルダー、ラガーマンによって結成された組織である

そしてこの日遂に決断が下された

「黄金の鷹作戦を実行に移す!」

黄金の鷹作戦

それは衛星軌道上に浮かぶネオ新都庁に頑張って乗り込みアンチボディの急先鋒である知事ネオシンタローを一喝、闘魂を教え込む一方で電網統制施設アキハバラを魂で強襲しホストコンピューターユージローを忍耐と強くなりたいという純粋な心と男の美学で破壊する完璧な二点同時侵攻作戦である

無謀だという声もあった

が努力と気合と根性があれば不可能などないと押し切られ、かくして作戦は実行に移された

そして以外にも作戦は順調に進んだのである




まずネオ新都庁をプロレスラーが陥落させた

衛星軌道上の都庁へと向かう方法は只一つ、定期的に都庁へ打ち上げられるシャトルしかない

プロレスラーたちは密かにその外壁にへばりついて都庁へ向かったのだ

常人ならば核融合推進による加速のGと大気との摩擦熱によって即死するだろう

だが彼らはプロレスラーである

日々打たれ投げられるプロレスラーの耐久力は常人を遥かに凌駕する

電磁バリアやレールガンなど外からの攻撃には万全の備えを誇るネオ新都庁だが其れ故内部からの攻撃には脆く、プロレスラーの侵入を許した都庁はあっけなく沈黙した

だが犠牲も大きい。都庁へ辿り着く前にプロレスラーの七割は燃えつき散っていった

人々は後に語る

「確かにあの時プロレスラーは空の中で光り輝いていた。プロレスラーは天使になったんだ」




ほぼ同時刻、アキハバラをラガーマンが占拠した

最終防衛システムT23とラガーマンの戦闘は熾烈を極めた

三百、二百、百

突入時五百人いたラガーマンが次々と倒れて行く

しかし残り十五人になった時奇跡が起きた

十五人が心を一つにして駆ける

パス、タックル、スクラム

十五人の動きがT23を翻弄し一瞬の隙を生んだ

そして

「トライ!」

ぴーっ

ノーサイドの笛が鳴り響いた

「イソップゥゥ!」

「イソップゥゥ!」

泣いた。敵味方なく誰もが抱き合い泣いた

「一人が皆のために、皆が一人のために」

この言葉をこれほど強く感じさせてくれる試合はかつてなかっただろう

ありがとうラガーマン、ありがとうT23

しかし進撃はそこまでだった

T23に勝利しながら彼らはユージローを破壊出来なかったのだ

なぜならそれはノーサイド精神に反する




ユージロー破壊を託されボディビルダーが走る

鍛え抜いた大胸筋をぴくぴくさせて走る

分厚い大円筋を隆起させ走る

鋼のような長内転筋ほう工筋大腿直筋外そく広筋内そく広筋長ひ骨筋大臀筋ひ腹筋ひらめ筋長指しん筋前けい骨筋をフル稼動させて走る

そして辿り着いた

無数のケーブルを生やす巨大コンピューターの前へと

ユージローであった

筋肉の塊が一斉に飛び掛かり、瞬く間にユージローは瓦礫の山と化した




この瞬間、電脳のバビロン・ネオトウキョウは崩壊し筋肉を原理とする新たな都市国家が生まれたと後世の歴史家は語る

上腕二頭筋都市ネオネオトウキョウの誕生である

ネオネオトウキョウはノーサイド精神・古代ギリシア的肉体美・123ダーを三大憲法に栄え、その歴史は鉄道研・落研・漫研の叛乱により幕を閉じるまで千年続くこととなる




体育会系よ
永遠なれ




[22] 大型恐怖小説「木村剛」 s・バレット 2002/06/06(Thu) 17:24
その日私が会社から帰ってくると、部屋では私と寸分変わらぬ顔立ちの男が寝そべりながらテレビを見ているのだった。

「やや」

「やや」

「貴様はだれだ」

「貴様はだれだ」

「俺は木村剛だ」

「俺だって木村剛だ」

「嘘だ、お前はニセモノだ」

「それはお前だニセモノめ」

男は私の名を名乗った上に私をニセモノ呼ばわりするのである。なめた話であるが少し気味悪くなって、試しに私にそっくりの男に母の命日を尋ねてみると、これがぴったり当たっており、彼もまた気味が悪くなったらしく二、三私に質問をしたのだが、答えてやると彼は苦虫を噛み潰したような顔になった。

「言っておくが、俺がホンモノの木村剛だからな」

「何を。俺がホンモノの木村剛だ」

二つの視線が中空で火花を散らす。

とその時、ベランダの窓ががらりと開き一人の男が部屋に入ってきた。

「ちょっとまて、俺がホンモノの木村剛だぞ」

そうすると今度は洋服ダンスがダン、と勢いよく開いた。

「何を言う、俺こそホンモノの木村剛だ」

その後、風呂場やトイレや冷蔵庫や洗濯機や事務机や靴箱やポリバケツやオーブントースターや玄関などから次々と「ホンモノの木村剛」があらわれ、総勢52人となった木村剛は口々に俺がホンモノだと主張しあったのだが、木村剛を名乗る他の男たちの主張がみなあまりに木村剛らしいので、そのうちに52人は自信を喪失して「俺は本当に木村剛だったろうか」と自己という存在への強い不安に襲われ始めたのだった。

空が白み、52人の木村剛が己が木村剛ではないかもしれない不安に耐えられなくなってきたころ、52人の木村剛のうちの一人が提案した。

「そうだ美代ちゃんだ。俺達のうちのだれが果たして本当の木村剛なのか、美代ちゃんに見定めてもらおうじゃないか。そして自分がホンモノの木村剛でないとわかった者は、潔く東京タワーのてっぺんから飛び降りてしまおう」

そうだ美代ちゃんなのである。美代ちゃんは私の恋人で最大の理解者だった。彼女なら私以上に私の私らしさを分かっているに違いなく52人の木村剛を、木村剛と51人の木村剛によく似た男たちに分類してくれるに違いなかった。

三十分後、美代ちゃんのアパートの前に11台のタクシーが列をなして止まると、中から次々と木村剛が出てきて一斉に203号室の前に押し寄せ、早朝のアパートにぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんと呼び鈴が52回連続で鳴り響いた。

目をこすりながら出てきたパジャマ姿の美代ちゃんに52人の木村剛が一斉に

「俺のことを木村剛と言ってくれ」

と詰め寄るとあまりの非現実感に美代ちゃんは極度のパニック状態に陥ったのだが、根気よく事情を説明するとうんうんと頷き、我々を丹念に見定めはじめたのだった。

しばらく我々を吟味していたがやがて

「わかったわ」

そしてすっと腕を上げると

「あなたがホンモノよ」

私を指差した。



こうして52人の木村剛は、私ことホンモノの木村剛と51人の木村剛によく似た名無しの男たちに分類され、51人の木村剛によく似た名無しの男たちは、その直後に世を儚んで次々に東京タワーのてっぺんから飛び降りたので、名実ともに木村剛は再び世に1人だけになったのだった。

私は後にどうして私を本物だと思ったのか美代ちゃんに尋ねてみた。

「ふふっ。だってね」

美代ちゃんは私の問いにくつくつ笑い意味ありげな視線で私の顔を覗きこんだ。

「あなただけだったんだもの。香港製じゃなかったのは」

めでたしめでたし。




[21] (削除)2002/06/06(Thu) 17:23



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