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第25回嘘競演 作品展示室

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[160] 自由型 コバ 2002/10/04(Fri) 01:00

・「へのへのもへ」

へ へ
の の
 も
 へ


・「へのへのばさら」

へ へ
の の
 ば
 さ
 ら


・「げるげるぎぎ」

げ げ
る る
 ぎ
 ぎ


・「ギャラクシー」

ギ ラ
ャ ク
 シ
 ー



・「虚空」

 ・   ・
 ・   ・

   ・

   ・


・「真空へと散逸」

     ・              ・


   ・                          ・




              ・












                  ・
・「いつかまた、地球(テラ)へ・・・」





・                                        ・


               ・                       ・

















                                ・

























                                         ・

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[159] 校則の自由化について じょーしゅ 2002/10/04(Fri) 00:25 [URL]

            校則の自由化について


生徒各位

                     平成14年10月3日
                     生徒会長 襟尾 正


             記


生徒会では、生徒の皆さんの要望を基に、今年度当初より校則の
自由化について学校側と折衝を重ねてまいりましたが、本日、
一応の結論に達しましたのでご連絡いたします。

1.通学時の交通手段について  最終合意
2.頭髪について        最終合意
3.服装について        最終合意
4.所持品について       保留

詳細は以下のとおりです。


1.通学時の交通手段について
現在、通学時の交通手段は、校則第8条第2項にて「徒歩、自転車、
電車、バス」のみに限られていましたが、今回の合意により、上記
の交通手段に加えて以下のものも利用できることとなりました。

リヤカー、そろばん(四つ玉可)、馬、牛(BSE検査済みのもの)、
山羊、駱駝(ひとこぶ推奨)、リャマ、アルパカ、コモドオオトカゲ、
竜、幌馬車、荷馬車(ドナドナを歌うこと)、籠、熱気球、ホウキ、
旅客機(ハイジャック不可)、風船(渡米不可)、大凧、屋形船、
たらい船、兄弟船、帆船、黒船(開国をせまらないこと)、航空母艦、
工作船、不審船、筏、潜水艦(人間魚雷不可)、
流氷(上部が平たいもののみ)


尚、バイクは危険なので禁止。
また、以下のものは「徒歩」の範疇とみなされます。
肩車、はいはい、けんけん、だるまさんがころんだ、逆立ち、後ろ歩き、
前転(でんぐり返し)、バック転、ムーンサルト、前方4回宙返り2分の
1ひねり


2.頭髪について
現在、校則第12条第3項及び4項では「長髪、オールバック、パーマ、
染色禁止。男子は耳が隠れないこと。女子は肩にかからないこと。
男女とも前髪は眉にかからないこと」とされていましたが、以下の髪型も
許可されることとなりました。

モヒカン刈り、辮髪、モボ・モガ風、大銀杏、高島田、慎太郎刈り、
健太郎カット、聖子ちゃんカット

尚、「髪の毛の代わりに蛇を生やしてもよいか」という質問については
議論が白熱しましたが最終的に許可されました。
ただし蛇はマムシ程度の大きさにとどめ、アナコンダなどは不可です。
また、蛇の代わりに、ウナギ、ミミズ、回虫、日本住血吸虫を生やすこ
とも許可されました。


3.服装について
現在、校則第5条第1項で、通学時及び校内での服装は「特別に許可さ
れた以外は制服または体育服を着用すること」とありますが、私服許可
の要望が強かった為、学校側と折衝を重ねてまいりました。
しかし、学校側意見は強硬であり、特に教頭が「日本が世界に誇るブル
セラ文化を次世代に継承する為にも制服着用は必須。もし制服がなくな
れば、何の為に教員になったのか私は自らのアイデンティティを喪失し
てしまう」と涙ながらに訴えた為、会議の場の空気は一気に制服擁護に
傾き、制服自由化案は否決となりました。


4.所持品について
現在、校則第20条第1項で、校内に持ち込む所持品は「文具等、学業に
関係あるものに限る」とありますが、生徒側からは日本刀や青竜刀の持
込み要望の声が多く聞かれます。
これについて学校側は、生徒にそれを許可するのであれば、教職員側も
重火器武装により対応したいとしています。議論は平行線のままであり、
この件については継続して協議するものとします。


以上のように校則自由化については一応の成果は得たものと考えますが、
生徒会では今後も校内での薬物使用や賭場の開帳等、更なる自由化につ
いて真摯な協議を継続したいと考えておりますので皆様のご協力をお願
いいたします。

以上

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[158] 駒込駅アナウンス それがなにより 2002/10/03(Thu) 23:55

まもなく内回り電車が参ります。
この列車は、1号車から4号車までは吊革が指定となっております。
指定吊革券をお持ちでないお客様は、5号車から後の
自由吊革車をご利用ください。


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[157] いつまでも、健やかに、 BEE 2002/10/03(Thu) 23:47

「結局のところ・・・不老不死は確かに存在する」
「ああ、でも、それは貴方が考えてるようなものではないよ。」
「と、言うと?」
「君が考えているのはアレだろう、そう、スーパーマンのような」
「銃で撃たれても弾を跳ね返したり、もしくはすぐにケガが治ったり」
「ええ・・・・そうではないんですか?」
「ああ」
「違う・・・いや、少なくとも私の場合は違った。」
「私もそうだ、不老不死は不老不死だが、おそらく拳銃で撃たれれば死んだだろう」
「撃たれれば死ぬのに不死?いや、その前にその言い方、今は違うんですか?不老不死ではないのですか?」
「ああ、今はただの老人さ。」
「そう、私たちにはその資格がなかった・・・彼らのように、単純に幸せだけを考え続けることが出来なかった。」
「彼ら?他にも、その、死なない人間が存在するのですか?」
「する、ああ、するとも。」
「死なないと言うよりも、『死』がない、『老い』がない、と言うべきか。」
「分からない、すみません、もう少し分かるようにお願い出来ますか?」
「言って分かるものでもないのだが」
「それに、君がもし不老不死を望むなら、聞かない方が良い。」
「どうしてですか、私はそれを求めて、もうずいぶん長い間旅を続けてきたのです。どうか教えてください」
「聞いて、その意味を理解してしまったなら、君は不老不死にはなることが出来ない。なっても、私たちのように、排除されてしまうだろう。」
「知ってしまってからもあの世界に居続けることは、常人に不可能なことなのだ。」
「・・・いや、教えたくないからそういっているのかも知れない、それに、本当は知らないのに知っているふりをして、僕から金を巻き上げる計画なのかも知れない、どちらにせよ、聞いてからでないと判断は出来ません、どうか、僕に不老不死の真実を教えて下さい。」
「まあ、そこまで言うのなら。」
「本当の所は、死ぬ前に誰かに言っておきたい気もあったしな。」
「ありがとうございます。」
「まず、単に不老不死になるだけなら、幾つか手段はある。」
「うん、簡単なものでは因果律の外に立つという方法だ。」
「・・・それは、死解仙のことですか」
「おお、さすがに我々を捜し出すほどの男だ、既に知っていたか」
「でも、アレは決して簡単なものではないのでは。」
「簡単なほうさ、しかし、簡単なだけあって、アレはあまり良いものではない。」
「ああ、アレになると、さっきも言ったように、全ての因果律から外れることになる、それは全ての事象に影響を与えず、また、全ての事象から影響を受けないと言うこと、つまり、簡単に言うと隔り世に行ったまま戻ってこれない。」
「現し世と離れては意味がないよなあ。」
「つまり死んでしまうと言うことですか?」
「いや、死とは違う、死は、終わりではない、また新たなスタートだ。」
「そう、だが死解仙になると言う事は、その輪廻からも外れてしまうのだぞ。」
「永遠に、意識だけが、この現し世とは違う、何もない世界に存在しつつける、それが存在と言えるのかどうかはまた別の話だが。」
「なるほど、それはちょっといやですね。」
「そうだろう、そうだろう。」
「次に、この身体の代謝を停止させ、保存し続けるという方法もあるな。」
「これは簡単だ、何しろ科学技術のみで行える、金さえあれば君にもな。」
「コールドスリープですね。」
「そうだ、いずれ未来で解凍する、それまでの間を生きていると言えるかどうかは別の話だが。」
「とりあえず年は取らないぞ?」
「僕が聞きたいのそんな話ではありません。」
「ああ、分かっているよ、この現し世で、因果律の内に身を置きながら、永遠に年を取らず、死なず生き続ける、その方法だろ?」
「生きている人間として、社会と関わりを持ち生活しながら、永遠に存在し続ける、その方法だろう?」
「そう、そうです。」
「・・・うん、何から説明したものか。」
「・・全ては観測者の観測によって、いや違う、観測者の心、意識によって、世界は決定されている、これは重要だろう。」
「元来、世界は自由にその有り様を変える、だが、観測者の固定された観念、意識が世界の自由を奪っている、これは知らなくてはなるまい。」
「その者の世界は、その者の心によって自在に有り様を変える。」
「その者の周りの者の世界は、その者の周りの者の心によって自在に有り様を変える。」
「結論から、簡単に言うとだ、『死』を全く意識せずに生活し続けることだ。」
「そう、そうだ、『死』というモノの存在を忘れる、いや違う、『忘れる』ではなく、はなから無いものとして認識、いや違う、『死というモノに対する認識』自体を脳裏から全く失うなわせる。」
「同様に『年齢』や『老化』に対する認識も失わせる、いや違う、非想非非想だ、『認識を失おう』『忘れよう』という意識すら持ってはいけない。」
「そ、それだけ、ですか?ただ『死』を忘れるだけで、死ななくなるって言うんですか?」
「ああ、それだけ、だ。」
「だが、その『それだけ』がむずかしい。」
「思考に、思考のベクトルに全く制限を掛けず、自由に着想、連想をしながら、『死』や『老化』を全く意識しない、君に出来るか?」
「花が枯れる、蝉が死んでいる、そういった事象を目にし、花瓶から枯れた花を捨てる、蝉の死骸を片づける、といった行動を取りながら、『死』や『老化』は全く意識しない。君に出来るか?」
「これが出来る者はまずいない、ほんの少数の例外を除いて、な。」
「例外?いるのですか、実際にその方法で生き続けている者が。」
「ああ、彼らは一体いつからあのままなのか、私にも分からない。」
「彼らは、その意識、その心のみで、その地区の行政すら騙している、いや、騙すとは誰に対する行為であろうか、その世界ではそれが当たり前なのだ。」
「不自然を、そのまま受け入れ、微塵も疑問を持たない、そう、未就学児童が大阪万博で迷子になった記憶を持っていたとしても、ああ、そんなことがあったなあと笑えるくらいに、だ。」
「今日は昨日の続きだと、明日は今日の続きだと、意識せずに信じることだ、交通事故や、銃を持った殺人鬼など、現れはずもないと。」
「正月が来て、半年たてば盂蘭盆が来る、それが何度繰り返しても年は取らないし、学校も進学しない。」
「クラスメートも疑問を持たない、いや、持った者はその世界から排除される。」
「『その世界』とは、この現し世とは別の世界なのですか?」
「いや、確かにこの現し世だ、電車で行き来も出来るし、電話で話すことも出来る。」
「しかし、私たちはもう、あそこへは行くことが出来ない。」
「なぜ行けないか、それは、私たちが老いてしまったからだ、詳しい説明は、まあ、止めておこう。」
「どうすればその世界へ行けるのですか?」
「今の話を聞いてなお、行けると思うのか?」
「今の話を聞いてなお、自らの意識、思考を騙すことが出来るのか?」
「分かりません、いや、おそらく無理かも・・・でも、やってみないまま諦めることは出来ません。」
「そうか・・・だが、今はまだ駄目だな。」
「ああ、二人目の伊早坂が頑張っている。しかし、彼も職業柄、色々とものを考えるタイプだ、時間の問題だろう。」
「ああ、もう少しすると、私が浜さん、貴方と入れ替わった時のように、突然の引越しを余儀なくされるだろう。」

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[156] 発見 それがなにより 2002/10/03(Thu) 23:35

哲学者で東京大学名誉助教授の光出波人博士は、低迷を続ける日本経済が実は
自由落下状態であることを論理的に解明し、雑誌「ネイチャン」に発表する。
光出波人博士は、経済を哲学的な見地から見詰め直す事で多くの発見をしてい
ることで知られるが、今回の発見は「経済を哲学的に見ているうちに、実は物理
学や力学の要素が働き、自由落下する経済があることを偶然を発見した。科学的
な裏付けを得るために、さらに哲学的な論考を行い、偶然では無いことが確認さ
れた」としている。詳細については雑誌発表前の公表は避けたいとして、言及し
ていない。
この発見は、金融問題や経済問題の解決先送りに対して非常に納得力のあるも
のと思われ、既に飽和状態となっている先送り案件を更に先送りすることを可能
にするものとして、注目を浴びている。特に、経済の低迷は自由落下しようとす
る経済の自由意志である、という一見なげやりな理論が「非常に魅力的」と経済
関係者の注目を浴びている。経済の自由意志ということになれば、一切の責任は
経済そのものにあり、政府や企業、特定の個人の責任が無くなるという、まさに
昏迷する経済界の助け船だ。



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[155] Rule the Waves 気楽院 2002/10/03(Thu) 22:10 [URL]

平成15年12月16日 神奈川地方裁判所 平成14年特(へ)第37564号
動物の愛護及び管理に関する法律違反被告事件


主  文

                             蛸関節 極彦                              

右被告人を懲役1年に処する。
未決勾留日数は一切算入しない。

理  由

(犯罪事実)

 被告人は、平成14年7月30日午後2時30分ころ、神奈川県藤沢市の自宅にて
飼育していた中型犬「ポチ」(雑種、当時3歳)に対し、バタフライナイフならびに
高枝切り鋏をもって、同犬の両耳および四肢の第一関節より先を切断。川崎市多摩区
所在の小田急電鉄小田急線登戸駅から東京都狛江市所在の同線和泉多摩川駅に至る鉄
橋上を走行中の電車の窓より、同犬を投棄した。

(量刑の理由)

 本件犯行は、飼い主という絶対的立場を利用して、飼い犬である同犬に対し、さし
たる理由もなく恒常的に殴る、蹴る、体毛を灰色に染める、顔面に無数のヒゲを植毛
するなどの暴力行為(以下「虐待」と言う)を続けていた被告人が、その凶悪な衝動
のままに無抵抗な同犬の身体を損壊せしめたもので、残忍な犯行である。

 被告人はさらに、投棄現場となった右鉄橋の直下を流れる多摩川に着水した同犬が、
不自由な肢のため川岸に上がることもままならずやむなく川面を浮き沈みしつつ必死
に泳いでいたところを付近住民に発見され身元不詳のまま暫定的に「タマちゃん」と
呼称されマスメディアで大々的に取り上げられるに至り、良心の呵責にさいなまれる
どころか、報道各社に対し「ウチの犬を勝手にテレビに出すんじゃねぇ、肖像権料払
えやゴルァ!」といった内容の電話・郵便・ファクシミリを再三執拗に送り、悪質な
恐喝行為(要求総額62億5370万円)に及んだ。
 被告人はまた、同犬の出現地点で氷菓子、弁当、同犬の写真入りTシャツ、同犬の
ブロマイドを頒布していた一般市民に対しても同様の恐喝行為を繰り返し、各員に法
外な金品(要求総額3億4910万円)を要求した。
 調子に乗った被告人は、被告人が何ら権利を持たないにもかかわらず、宮城県歌津
町にて発見されたワモンアザラシ(以下「ウタちゃん」と言う)の肖像権管理者であ
る旨までも不当に詐称、ウタちゃんのデジタル写真のコピーを配布していた同県同町
役場を恐喝(要求総額9億2050万円)するに及んでいる。

 被害を受けた同犬は、これまで被告人に対し噛み付く、吠えかかるなどの反撃らし
い反撃すら行った形跡もなく、何ら落ち度はなかった。被告人の身勝手で自己中心的
な犯行に、酌むべき事情のないことは明らかである。
 本件により被告人は実名報道され、仕事も信用も失い、自宅は放火され、インター
ネットの大手匿名掲示板にもスレッドが立てられFLASHムービーの格好の題材と
されるなどの社会的制裁を受けてはいるが、これらを鑑みても情状酌量の余地は一切
認められない。
 また本件公判中、被告人は同犬もしくは社会に対する謝罪の言葉を一切口にせず、
逆に公判廷にて「捨てずに唐辛子と一緒に煮込んで食っちまえばよかった」とうそぶ
くなど、悔悛の態度も無きに等しい。
 本件に対しては全国より被告人の公開処刑を求める240万6918名分の署名が
裁判所に寄せられ、その社会的影響は極めて大きいと推認される。ことに「タマちゃ
ん」のショッキングな正体を知った日本全国の無垢な子供たちが受けた心的外傷の深
刻さは、推量するのもためらわれるほどである。

 被告人より右虐待を受け続け、身体の自由をほぼ奪われたにも拘らず、けなげにも
藤沢市の被告人宅へ帰還しようと苛酷な気象状況の中を多摩川から海路東京湾を南下
し、三浦半島横須賀港沖にて台風21号に遭遇、遂に力尽きた同犬の心情を慮るに、
裁判官は頬を穿つ血涙を止める術を知らない。
 このくされ外道には、可能ならば極刑をもってのぞみたいところだが、残念ながら
我が国は法治国家ゆえ、本件においては動物の愛護及び管理に関する法律第27条の
規定による最高刑を適用し、主文のとおり量刑した。
 本件公判と同時進行している恐喝未遂事件の公判において、被告人がさらなる厳罰
をもって処断されることを、人類を代表して切に願うものである。

(求刑懲役1年)

神奈川地方裁判所刑事第9部
裁判官  猿井戸 舞子


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[154] 「皇室アルバム 最終回」 梅千代 2002/10/03(Thu) 22:03 [URL]

「さあ、お別れの挨拶はすんだかい?」

こう尋ねると、皇太子は小さく頷き、
僕たちはがらんどうになった御所を後にした。

夜はまだ明けきってはいなかった。身を切るように冷たい空気が、
今日の旅立ちを一層、厳かなものにした。

僕と皇太子は、木立に囲まれた小道をゆっくりと歩きながら、
桜田門へと向かった。

皇太子は、いつもの散歩と変わらない様子で、
木の実を拾ったり、時折、聞こえる鳥の声に耳を澄ませたりした。
それは、何か足りないものはないかと、
一つひとつ確かめる行為のようでもあった。

「皇太子、これをお食べよ」

僕はポケットの中から、鶴屋吉信の柚餅を取り出して、皇太子に渡した。
彼は大事そうに手のひらで受け取ると、包みを開き、静かに食べはじめた。

これから先、皇太子が御用達のお菓子を食べることもないのだろう。

彼らが「ここ」にいられないと決まった日から、僕は皇太子に、
外の世界で生きるための術を、出来る限り教えてきた。

この世界で生き残るために必要十分な知恵と、
その知恵を最大限に生かす力を。

最初は吉野家の牛丼さえ食べられなかった彼も、
今では、マクドナルドのチーズバーガーが大好物だ。

彼には、出来得る限りの情報も自由に与えた。

いささか乱暴かとは思いつつ、「2ちゃんねる」も閲覧させてみた。
しかし、皇太子は「自分の似顔絵がある」といって、
無邪気に喜んでしまい、つられて僕まで笑い出す始末。

だが、それも今となっては、暖かい思い出だ。

そんなことを考えているうちに、桜田門の前まで着いてしまった。
いろいろ、皇太子に言っておきたいこともあったのに。

だが、もういい。
あとは、彼が自分でやっていくしかないのだから。

「さあ、分かっているね。この門から先は一人だ。
 あまり無茶はしないように。…いいね。さあ、お行き」

―――突然、皇太子が僕の腕をつかんで、抱きついてきた。
首を激しく左右にふって、慟哭している。

「仕方ないんだよ。これはもう決められたことなんだ。
 出て行くよりほかないんだ。お前なら、きっとやっていける」

皇太子が、これほどまでに激しい感情を見せたのは初めてのことだった。
痛いくらいに強く、彼は僕の腕にしがみついてくる。

「さあ、皇太子。行けっ。行くんだっ!」

僕は思わず、皇太子を乱暴に突き飛ばしてしまった。
2、3歩、後ろに倒れこんだ彼が、何かを奪われたような表情で僕を見る。

彼のそんな顔を見たくはなかった。

「いいかい、皇太子。お前はもう自由なんだよ。何にも気にする
 ことはない。自分で考えて、自分で自分の幸せをつかむんだ」

皇太子は埃を払いながら、ゆっくりと立ち上がった。

僕たちはしばらくの間、無言で見つめあっていた。
おそらく、同じ思いを抱きながら。

やがて、皇太子はあの儚げな微笑で深く頷くと、
腕を大きく一はばたきさせて、飛び立った―――!

そして、朝焼けの空に、
まるで祝福をもたらすかのような、大きな円を2回描くと、
またたくまに東京タワーの方向へ飛び去って行ってしまった。

「皇太子、元気でな」

僕は、皇太子につかまれた腕の感触を確かめながら、小さくなって
いく皇太子をいつまでもいつまでも見つめていた。





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[153] 風雲! 大阪冬の陣 ナマクラ 2002/10/03(Thu) 21:06 [URL]

ブォォ〜 ブォォォ〜
ワァァァァァァ

「殿、徳川方の軍勢はすぐそこまで迫っております!」
「殿、既に一の陣が突破されました!」
「むむむ、致し方ない、ここはひとまず退却じゃ。佐助、後を頼むぞ!」
「ははっ!」

「そうれ、敵陣は総崩れじゃ。者共、一気呵成に蹴散らして幸村めを討ち取れい!」

ワァァァァァァ

「おぉっと待った。ここは通さぬ」
「ぬぬっ、何奴?」
「おう、聞きたくば冥土の土産に聞かせてやろう。真田自由勇士が一人、猿飛佐助だ!」
「同じく、霧隠才蔵!」
「な、なんと?!」
「あれが音に聞こえし真田の勇士とやらか!」

ザワザワザワ

「真田の勇士といえば、確か」
「うむ、一騎当千の強者が十人も揃うておるとか」
「前に二人、すると後の八人は・・・」
「ま、まさか・・・我らは既に奴らに囲まれているというのか?!」


(おい、才蔵)
(なんだ?)
(残りの連中は?)
(来てねえよ)
(マジ?! 何でだよ!)
(仕方ねえだろ。自分が戦いたければ戦う、戦いたくなければ戦わない。それが俺たち真田自由勇士のポリシーのはずだぜ)
(ポリシーったってさぁ・・・やることやってから言えよなまったく・・・)
(リーダーはつらいねえ)
(茶化してる場合かよ。どーすんだよ二人で。あいつら百人はいるぜ)
(どーすんだよって言われてもなあ・・・)


「むむむ、右か? 左か? 後ろか? どこじゃ、どこに潜んでおる!」
「皆の者、臆するでない、臆するでないぞ」

ザワザワザワザワ

「お、おい、えらいことになったぞ」
「知っておるか、真田の勇士はみな恐るべき妖術を使うとか」
「それじゃ、妖術で姿を隠して斬りかかる気じゃ」
「拙者剣にかけては人に遅れは取らぬが、妖術の類にはからきし弱いでござるよ」


(猿飛よぉ)
(おお、何かよい策が浮かんだか?)
(いや、俺もやっぱやめとくわ。帰る)
(あーのーなー!!!)
(なーんか気が乗らないんだよね。嫌なのに渋々やるなんて自由勇士の名がすたるってもんだろ?)
(おまえ状況わかってんのかよ! 俺達がここで敵をくいとめなかったら殿の命が危ないんだぞ! 主家の命運がかかってんだよ!)
(なに、心配いらないって。俺達だったらフリーになっても十分やっていけるって。じゃな)

ドロンドロロン モクモクモク


「ききき、消えたぁっ?!」
「見えぬ、奴の姿がまるで見えなくなったぞ!」
「こ、これはいかん。姿の見えぬ者が相手では勝負にならぬ」
「もうだめだ、我ら全員膾切りにされてここで死ぬんだぁ」


(ひ、ひでえ奴だ、損なことは俺にばっかり押し付けやがって・・・こうなったらしょうがねえ、一人でも多く道連れにして散ってやる! ここが俺の墓場だ!)

シャキーン!

「いざ! 参るーーーッ!!!」
「来たぁーーーッ!!!」
「逃げろーーーッ!!!」

ドタドタドタドタドタ

「な、なんだお前らぁ! 人がせっかく死ぬ気にまでなってんのに何でそっちが逃げるんだよぉ! 畜生、どいつもこいつも好き勝手なことしやがってぇ! 待てぇ、待ぁてぇぇぇ・・・」


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[152] (削除)  鯖  2002/10/03(Thu) 19:30

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[151] 自由の精神 2002/10/03(Thu) 19:29

自由の国、アメリカ合衆国。
この頃は怪しいが、その基本精神を打ち立てた人々のことを忘れてはならない。
彼らは夏休みの自由工作を"自由"というものを作ることだと勘違いしていたという過去があり、
アメリカ合衆国が成立した際、小学校時代の恩師の元に走ったと言われている。

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Last modified: 2002/10/04(Fri) 01:00 JST
第25回嘘競演  Uso-Kyoen Vol.25
議長:気楽院 (Kirakuin)
usokyoen@kasugai.com

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