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[42] 投稿終了! しーもす@議長様の手下 2002/06/15(Sat) 01:52 [URL] |
投稿ありがとうございました。 |
[41] 未来笑点〜ある司会者の憂鬱〜 GIN 2002/06/14(Fri) 23:39 [URL] |
2060年、長寿番組新記録を更新中の怪物番組「笑点」。 司会は勿論円楽。先祖代代笑点の司会を受け継ぐ人気落語家の彼は、 この番組にほとほと嫌気がさしていた。 「円楽師匠はいりまーす」 スタッフの声に促され、高座へあがる階段をゆっくりのぼる。 今日も大喜利メンバーは既にスタンバイしていた。身じろぎもせず。 「ロボット、ロボット。なんでロボットと大喜利せにゃならんのだ」 円楽は大きくため息をつき、いつもの座卓の前に腰を降ろした。 「放送1分前でーす」 スタッフが慌しく4台のロボットにスイッチを入れる。 ぶぅん、とモーターが回転する音がしてロボットが徐々に動き始める。 なかなか起動しないロボットの頭をスタッフが幾度となく叩く。 仕方ない。これが俺の仕事だ。円楽の暗澹たる心中をあざ笑うかのように 軽快なテーマ曲が会場に流れ始め、ゆっくりと緞帳があがりはじめた。 「今夜もまた笑点の時間がやってまいりました、司会はご存知円楽」 俺もプロだ。円楽はいつもの表情をつくり、淡々と司会を進行する。 「まずは自己紹介から」 そう言って一番手前のロボットに視線を送る。 「センジツ、ジョシコウセイカラ「キャー。クロビカリスルボディ、 ステキ!」トサワガレマシタ。オイ、オレニフレルトヤケドスルゼ! コユウザマーク2デゴザーイ!」 コユウザマーク2がいきがって左小指を立てると会場から嬌声があがった。 「てめえが黒いのは錆びてんだよ。興奮してエンストしてりゃ世話ないや」 コユウザマーク2の頭部から煙が燻り始め、どおっと客席が沸き立つ。 宴楽は流れてくる煙に咽びながら、扇子の裏で少し咳き込んだ。 初っ端から身体を張った芸かよ。煙と侘しさで円楽の瞳に涙が浮かぶ。 「もういいよ、次いっとくれ」 円楽が言うがはやいかキクゾウD´(ディーダッシュ)から危険を知らせる ブザーが鳴り始め、頭部がくるくると回り始めた。 「キクチャン、ラーメン、オイチイ。キクチャン、ラーメン、ダイスキ」 怖えなあ、ただの不良品じゃねえか。観客が爆笑する中、円楽はひとり うんざりした表情でキクゾウD´の頭部を眺めていた。PL法違反だぜこりゃ。 バッテリー抜きヤマダくんの活躍でようやく騒ぎは収まり、自己紹介に戻る。 「ひでえめにあった。ラクさん、しっかりしめとくれよ」 ひときわクールな容姿のロボットが、円楽を冷ややかに一瞥し挨拶を始める。 「セイレキ2050年、アメリカトイギリスノアイダデオコナワレタ センソウハ、セントウヨウロボットガシヨウサレタコトカラ、ダイイチジ ロボットタイセンナドトトヨバレテオリマス。カクイウワタクシモ、 グンジモクテキデツクラレタロボットデ、ヒトヲコロスホウホウヲ108 ソナエテオリマス。エンラクシショウ、ゲンドウニハチュウイナサイマセ。 ”ラクタロウ-03-アタッカー”デゴザイマス」 「腹黒いねえ」 円楽に呼応して周囲のロボットたちも「ハラグロイ、ハラグロイ」と続ける。 円楽はわきあいあいとした雰囲気の中、時折自分に鋭い視線を投げかける ラクタロウ-03-アタッカーの視線に怯えていた。 殺す。あいつは多分躊躇なく俺を殺す。 円楽はラクタロウ-03-アタッカーの機嫌を損ねないようにっこり微笑み返した。 「はい、次」 円楽は心を奮い立たせて司会を続ける。 列の最後尾、オレンジ色の悪趣味なデザインのロボットが口を開く。 「アタシャ、ノウコウヨウロボナンデ、ムズカシイコトハワカリマセンガ、 ラクタロウハコノバングミチュウニエンラクヲヤッテシマイマス」 ひときわ大音量でがなりたてるコンペイ2型の声に、会場が一気に沸き立つ。 やれやれ、円楽は今日何度目かわからないため息をついた。 俺の命を笑いものにしやがって、演者も演者ならそれで笑う客も客だ。 円楽は笑いの絶えない会場に目を泳がせ、諦める。仕方ねえ、こんな時代だ。 会場は落語を愛するロボットの集団で今日も満員御礼だった。 <終> |