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[160] 偉人の肖像2 藤木ゲルーシ 2001/03/19(Mon) 06:03
フレデリック・ショパン

ピアノの詩人と呼ばれ、「幻想即興曲」「葬送行進曲」など数多くの名曲を残した。
また、巧みな物真似と即興演奏で社交界の寵児となった。
反面非常に繊細な神経の持ち主でもあり、「泣き虫ショパン」と揶揄されることもある。

****************

1845年。ショパンは苦境に陥っていた。
それまで甲斐甲斐しく彼の世話をしていたジョルジュ・サンドとの関係は、
ちょっとした誤解からぎくしゃくしはじめていた。
また宿痾の結核は着実に彼の体力を奪い、彼を日ごとに衰弱させた。

ある日、そんなショパンを心配した友人のリスト・フェレンツが彼のアパートを訪ねた。
リストが訪れた時、ショパンはいつものように目に涙をためながらピアノを弾いていた。

弾かれていた曲は、リストが今まで一度も聞いた事のないものだった。

ヴェネチア民謡のリズム。シャープが6つもある嬰ヘ長調。
これらの要素が、理屈の上ではその曲は陽気なはずだと示唆する。

それなのに、その曲は言いようのない物哀しさに包まれていた。

右手で奏でられるメロディーは何度も上へ登ろうとするが、いつも頂点に達する前に
下降線をたどる。まるで、何度泣き止もうとしても涙が溢れて来るように……
寄せては返す波のように淡々と弾かれる低音部と長調の虚明るい響きは、
そんなメロディーのすすり泣きを際立たせる。

いつの間にか、リストの目にも光るものがあった。

やがて、すすり泣きは嗚咽に変わる。激しく嗚咽しながらも頂点を目指す旋律。
ついに曲は頂点に達するが、その直後には、終焉に向かうコーダが待ち受ける。
そして夢見るようなパッセージとフィニッシュ…


弾き終わると、ショパンは顔を伏せて泣きじゃくった。
しばらくの間、彼のすすり泣く声だけが部屋に流れた。

やがて、あまりに重い静寂を破るように、リストはショパンに話し掛けた。

「素晴らしい……ところで、この曲の名前は?」

愚問であることは彼にもわかっていた。
だが、黙っているとその曲の哀しさに押しつぶされてしまいそうだった。
何かを言わずにはいられなかったのだ。

ショパンも、この質問は愚問だと感じた。
バカ野郎、なんて無粋な質問をするんだ、と。
そこで、ショパンは泣きじゃくりながらもかすかにこう答えた。

「バ…カ…ロー…」

「え?バーカロー?いや、バルカロールだな!」

完全にリストの聞き違いだった。しかし、ショパンは反論しなかった。
曲名など、彼にとってはどうでもよかったのだ。

こうして、このショパン晩年の名作は、彼自身によって
「バルカロール(舟歌、Op.60)」と名づけられたとされている。

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[152] お彼岸 吉岡伊予守爛柯 2001/03/19(Mon) 02:45
女房に 云ふに云はれぬ 仏があって 廻り道する 墓参り

「旦那様、たかは、存じておりますのよ。」
「ん、何の事だ。」
「お墓参りの事で御座います。」
「ああ、千代の墓か。
そなたが行きたがらんから、身が参るのではないか。
幸い少ない子供ぢゃった。
生きておればもう八つぢゃのう、たか。」
「其の事は仰らないで下さいませ。
又、涙を堪(こら)え切れなくなって参りますから。」
「たか、悪かった、許せ。」
「いいえ、そんな事は。
お墓参りの他にも、御用が御有りで御座居ますのでせう。
存じておりますのよ。」
「たか、其の方知っておったのか。」
「はい、昨年の秋のお彼岸に御殿医の大場様のお屋敷に参りました際に。」
「見ておったと云ふのぢゃな。」
「はい。大きゅうなられたやうで。」
「ん、うん。大分大きゅうなった。
参るたびにそなたに悪いと思ふて涙したものぢゃ。」
「今年のお彼岸には、たかもお連れ頂けませんでせうか。」
「何と、そなた、良いと申すのか。」
「はい。」
「涙を見せるでないぞ、たか。本当に良いのぢゃな、胃カメラを飲むのは。」

時代劇に嵌まってしまった胃にポリプを持つ夫婦の会話!





[151] 涙の全国大会 はなじろ 2001/03/19(Mon) 01:52
「キャプテン、もうすぐ・・・あとちょっとだぜ」
「分かってる! あと少しで、俺達、日本一だ!」

 ここまで来れたのも・・・無名だったこの風連高校が全国大会に来れたのも、みんなの
努力の賜物だった。全国制覇を目前にして特訓の日々が脳裏をよぎる。天塩川でヤツメウ
ナギが群れをなす水面に顔をつける特訓は壮絶だった。額や頬に吸い付き、皮膚を削って
吸血するヤツメウナギ。あの痛みは思い出すだけでも涙腺が緩む。特訓後、捕まえたヤツ
メウナギを蒲焼にしてみんなで食ったっけ。みな無言だったが、確かに生まれた連帯感。
誰とも無く泣き出して、最後はみんなで号泣してた。

 忠烈風ダムで水面に反射する夕日のギラギラを眺める特訓もあったな・・・まぶしさに
思わず目をそむけた自分を張り倒してくれた親友の統広。ふと右隣にいる親友を見ると、
自分と同じく目が潤んでいる。ふふ、俺ももう目頭が熱くて・・・俺とおまえ、どっちが
先に泣くのかな・・・

 ピヤシリ温泉スキー場で、ダイヤモンドダストが煌く早朝、瞬きをしないでスキーを
する特訓もあった。この大会が終わったらまたみんなで行こう。但し今度はゴーグルを
つけて。

 そんなつらい特訓の日々を思い浮かべていると・・・ついに流れた涙がひとしずく。
 その瞬間

 「勝者、風連高校!」

 こうして全国高校早泣き選手権大会で遂に悲願の優勝を果たした俺達には、もう流す
涙は残っていなかった。


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