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[30] こころをこめて歌いましょう。 さすけ 2002/05/19(Sun) 09:32

『まちぼうけ』

中国の「守株待兔」という古いお話をもとに北原白秋が作詞しました。

まちぼうけ、まちぼうけ。

ある日、男がせっせと畑仕事にせいを出していました。

するとそこに一羽のウサギが突然飛び出してきました。
野生のウサギはとても警戒心の強い夜行性の生き物なのに
人前に飛び出すとは一体どうしたことでしょう?

白秋は、ウサギのこの異常な行動は「コロリ」にかかっていたせいだと説明しています。
今で言う「コレラ」です。

コレラ毒素による激しい下痢のため脱水症状を起こし
痛みを伴う脚部筋肉の麻痺でバランスを失ったウサギは転倒し、
不幸にも畑にあった木の切株に頭をぶつけ首の骨を折って死んでしまうのでした。


その様子が普段娯楽もない暮らしをしている男にはよほど面白かったのでしょう。
もう一度コレラのウサギが来ないものか、転ばないものかと
仕事もせずに待ち続けるのですが、やはりウサギはやってきません。
とうとう畑は荒れ果て、男の行く末を「寒い北風」が暗示します。

「コレラのウサギなど滅多にいるものではないよ」
「旅先では生水や加熱していない食べ物は避けたほうがいいね」
優しく諭す白秋の気持ちが伝わって来る詞です。 


では、ウサギの気持ちを思いうかべながら『まちぼうけ』をみんなで歌ってみましょう。
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[29] 成長 古賀 2002/05/19(Sun) 09:30
「うふふふ…」
「お前ももう箸が転んでもおかしいと思う年ごろだねえ」


「うふふふ…」
「お前ももう厚い鋼鉄の壁の向こうで箸が転んでもおかしいと思う年ごろだねえ」


「うふふふ…」
「お前ももう1万メートル先で箸が転んでもおかしいと思う年ごろだねえ」


「うふふふ…」
「お前ももう怪獣や宇宙人や異次元人が箸に化けていてもおかしいとわかる年ごろだねえ」


「うふふふ…」
「お前ももう箸がマッハ7のスピードで飛んでいっても追いつける年ごろだねえ」


「うふふふ…」
「お前ももう身長50メートル体重2万5千トンの箸が暴れていても3分以内に退治できる年ごろだねえ」


「じょわっ」
「お前ももうそんな年ごろなんだねえ。向こうに行ったら早田さんや諸星さんによろしく。頑張って箸の侵略から地球の平和を守るんだよ。」





[28] 7回裏。1アウトランナー2塁。 GIN 2002/05/19(Sun) 04:40 [URL]
司会「ワンアウト、ランナー2塁。間々岡、ここは踏ん張りどころですねえ、掛富さん」

解説「そうですねえ。ここを踏ん張りきれるかどうかでゲームが決まりますよ」

司会「さあ、ピッチャー振りかぶって、第一球を、、、転んだっ!あーっと転びましたよ掛富さん」

解説「転びましたね〜。いやこれは痛いですよ」

司会「この間に2塁ランナーはホームイン。ジャイアンズ一点追加〜、ついに均衡が破れました!」

解説「これは大きい転倒になりましたね〜」

司会「どうですか掛富さん、VTRから今の一球を解説してください」

解説「今のは間々岡くんの完全な投球ミスですね」

司会「ほう。と、いいますと?」

解説「見てください(VTR再生)。ここまではいつもどおりの投球フォームですね」

司会「ええ」

解説「でも次の瞬間、力が入ったのかいつもより大きく足を踏み出してしまうんです。あっと、ここです。VTR止めてください。足を大きく踏み出したせいで踏んでしまってるのがわかりますか?」

司会「あっーと!これはっ、バナナの皮に足が掛かっています!いや、踏み込んでいますよ」

解説「ええ、これだけ踏み込んでしまっては、さすがの間々岡君も踏ん張りきれません」

司会「なるほど。それにしても痛い転倒になりました。投手コーチがマウンドに駆け寄ります。ピッチャー交替ですか、掛富さん」

解説「いや、あれだけ転んでしまってはいたしかたありません。交替でしょう」

司会「おっと、やはり交替のようです。間々岡、マウンドから降ります。。。あっ、間々岡、転倒っ!転びました、また転びましたよ、掛富さん」

解説「いやあ、見事に転びましたね。頭からいきました。もう限界ですね」



[27] バナナの皮ですべって転ばなかった人100人にききました。 週刊WEBマガジンSAKANAFISH 2002/05/19(Sun) 04:19 [URL]
バナナの皮ですべって転ばなかった人100人にききました。
すべらずにどうやって転んだのですか?


つまづいて転んだ …28人
後ろで大爆発が起こった …12人
足の筋肉がバナナの皮に近づくと弱まるしくみになっていた …14人
バナナの皮をふみそうになった自分に罰をあたえるため …5人

もう60年ほど昔になりますか、その頃私は戦後のどさくさの中で
食うのもやっとという日々を送っておりました。
日々の重い労働から帰ると、腹をすかした子供と妻が待っている。
私はそんなつらい日々にもう嫌気がさしておりました。
 そんなある日、私は駅前の外食券食堂でこんな話を聞きました。
「南洋からの引揚者で、バナナ大尽という大金持ちがいるらしい。
その大尽は南洋がらみの仕事をする人を探しており、
とんでもない給料を払ってくれるそうだ。」
私はわらをもすがる気持ちでそのバナナ大尽のところへ向かいました。
徴兵されるまで私は南洋からの缶詰めを売る会社にいたため、
いささか自信はあったのですが。
 バナナ大尽の屋敷は見たことも無いくらい大きく、真っ黄色に
塗りつぶされておりました。戦中であれば真っ先に空襲の標的と
なってもおかしくはありません。それほど目立っていたのです。
案の定、面接の希望者が門前市をなすほど並んでおりました。
先ほどまでの自信も萎えましていささか消沈しておりましたが、
出てくる人間がみな一様に肩を落としております。まだ決まって
はいないのだと安堵もいたしましたが、半面でますます厳しい条
件なのだなあということに気づかされもいたしました。
 ようやく私の番がまわってまいりました。
私は事務員に名前を告げると、大尽の部屋へ案内されました。
屋敷の中はひどく長い廊下と曲がりくねった階段ばかりで、
部屋の扉らしきものは一つとてありませんでした。
そうして20分ほども屋敷の中を歩き回った頃でしょうか、
「よく来てくれた。私が南洋兄弟商事の為村です。」
びっくりしてふり向きますと、そこには中年の、この食糧難の
さなかに丸々と太った男が、バナナをくわえて立っておりました。
ははあ、これがバナナ大尽なのだな、と私が思う間もなく、
バナナ大尽はバナナを手にして私の顔を指しました。。
「うむ、君で決まりだ!採用だ!吉井よ、表の連中に帰ってもらえ!」
「はっ。」
吉井と呼ばれた事務員はもと来た長い長い廊下をゆっくりと
歩いていきました。
「私も長いことこの仕事をしているが、君ほどの適任者は
見たことが無い。まったく世の中は広いもんだ。」
嬉しそうに語るバナナ大尽に、私はまだ名を告げていなかったことを
思い出しました。
「あ、あの私…。」
するとバナナ大尽はうるさそうに手をふり、
「名前なんぞはどうでもいい。さっそく今日から仕事にかかって
もらおう。」
「し、仕事ですか、いったいどんな…。」
「なに、簡単な仕事だ。君はこれから町に出て歩くだけの仕事だ。」
「すると、私はサンドウィッチマンのようなことをすれば
よいのですか?」
「いや、なにもあんな野暮ったい看板なんかはつけんでいい。
歩きつかれたら好きなだけ休みたまえ。天気が悪い日に歩けとも
言わん。君は歩きたい時に歩きたいだけ好きなように歩けばよい。
ただ、一つだけ約束を守ってくれればよい。」
「約束…ですか?」
いぶかる私をじらすかのように、バナナ大尽はバナナをゆっくりと
うまそうに吸い、こう言いました。
「街を歩いている時に、バナナの皮が落ちていたら必ず転びたまえ。
ただし、このことは決して誰にも言ってはならん。それだけだ。」
私は茫然としている間に屋敷を出たらしく、気づくと妻と子供のいる
家に帰っていました。服のポケットには銀行の預金通帳が入っていました。
 それからというもの、私は街を歩いてはバナナの皮に出くわすたびに
転ぶ日々を送ってまいりました。毎月のように銀行口座には莫大な金が
振り込まれております。いったい何のためにこんなことをしているのかは
この年になるまで考えたこともございません。ただ私はバナナの皮で
転ぶ…
バキューーーン!
ぐわっ!!…そ、そんな、バ、バナ……ザー…ガクッ。  …41人




[26] リストラで 窓際さえも 狭き門 しーもす 2002/05/19(Sun) 03:34 [URL]
「おーい山本君!ちょっと来てくれんか」
「はい、今度はどうしました?」
「わしの画面を見てほしいんだが」

無題 - メモ帳
オーデ:
:ブスの卵
だるまさんが:だ
:でもただでは起きない
;で秋の近きを知る





「いやあ最近の変換はこんなことまでやってくれるんだねぇ。
 キーひとつ押すだけで済むのをなあ。
 ほら、一番下なんて5文字打って1文字にしかならんよ、わあっはっは」
「そうですねぇ本部長…ははは…」



[25] (削除)不滅の放蕩2002/05/19(Sun) 03:27




[24] 和製SF超大作 s・バレット 2002/05/19(Sun) 03:16
壮大なスケールで送る空前のSF超大作、ついに完成
原作:山中恒 監督:大林宣彦
「おれがバナナでバナナがおれで」
近日公開




[23] だるまさんが s・バレット 2002/05/19(Sun) 03:15
「だ〜」











「る〜」









「め〜」










「し〜」









「あ〜」









「ん〜」










「が〜」











「転んだっ!」

スッテーン

きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!
きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!
きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!
きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!
きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!
きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!
きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!
きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!
きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!
きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!きゃん!

きゃん!


「ふふふっ……はっはっはっ……はーーーはっはっはっはっ!」(フェードアウト)


*次回予告!
「ルルカさん、目を覚ませ!D=ルマー・ファイトは、人間を不幸にするための道具じゃないんだ!」小林少年に流れる熱いメンペキ・スピリットによって、「殺す」ためではなく「まもる」ためのD=ルマー・ファイトを知ったダークファイター・ルルカ。彼女の協力によって、一行は富士樹海最深部のローリングソサエティ本部へと辿り着く。が、しかし、そこで小林少年を待っていたのは廃虚と化した本部と、大地に横たわる無残な101のむくろだった!

次回、不動ファイター・D=ルマー 第八回「戦士の誇り」
来週もこのチャンネルに、メンペキパワァァァァァ・レディィィィ・セットッ!




[22] 異コレ33(長文) s・バレット 2002/05/19(Sun) 03:14
異形コレクション33『境界』(監修/井上雅彦)より


ころりん侍
田中てつひろ



正月早々、急の不幸に見舞われ、姉と出掛けなければならないことになった。

経緯を簡潔に説明するとこうなる。

「バナナの皮に滑って転ぶ」というまるっきりマンガのようなふざけた災難に遭遇した今年七十に手がとどこうかという私の姉は、その弾みで後頭部を茶箪笥の角で強打して病院へ担ぎ込まれ、直後に医者に臨終を告げられたのだが、その途端に意識もなく動けるはずもない姉が目を開け、二十代の娘のようなしっかりとした足取りで起き上がって

「知っとる?ヨモツヒラサカへは歩いていけるんやで」

と言い

「まあちゃん、一緒に来てえな」

私の袖をぐいぐいと強引に引っ張って、すねたような口調で

「一人はいやや。約束したやんか。」

約束とは何のことなのか、どうにも思い出せないのだが、玩具をねだる子供のようにしつこくせがむので仕方なく私は姉と二人で連れ立って外出し、病院のすぐ前を走る千本通りを上がり北大路通りに出て東に折れ二百メートルほど歩いたところにある赤いのれんを掲げた小さなラーメン屋の脇の小道に入って、民家の間を縫うように敷かれた狭い石畳をすたすたと歩いてゆき、その道が尽きた先にある、その、なんとかという坂を一緒に下ったのだった。

姉と一緒にどこかへ出掛けるなど、久しくなかったことだった。

坂を下っても姉は歩調をゆるめることなく、私の服の裾をぐいぐいと引っ張って齢七十とは信じがたい速度で歩き続け、いい加減、足の裏が痛くなってきたころ、どことなく酒蔵を思わせる白塗りの建物の前で立ち止まった。

唐突に「こんばんは」と化けガラスのような声で叫ぶ。

と、蔵の勝手口が開いてぬっ、と着物姿の女中が顔をあらわし、お待ちしておりましたさあさあどうぞお入りください仕度はすでに整っております、と好意的な内容とは相反して機械のようなひどく無愛想な口調でまくし立てこちらの返事もまたずにぷいと消えたのだが、姉はその態度を一向に気にする様子もなく当たり前のことのように蔵の中へと入って行き、そこで私と姉は家の女主人に、ざくろによく似た赤い果実を振る舞われたのだった。

姉は女主人に気がつかれぬよう、それを絶対に食べてはいけないと私にこっそりと言った。自分は実をすするふりをしながら、すべてテーブルの下へと捨てていた。

女主人は、

「おやおや行儀が悪いですねぇ」

とにこにこと笑って言ったが、姉の足はそれを気にする様子もなくテーブルの下で、落とした果実を一つ一つ、ぐしゃぐしゃに踏みにじっていた。

親切な女主人に悪い気がして、姉の目を盗んで、私は果実を一口だけ食べた。


その後、姉は女主人の「夜も遅いことですし、あちらまで送らせましょうか」との申し出をやんわりと断って、皺くちゃの顔にさらに皺を寄せて笑うと

「用も済んだし、はよ帰ろ」

と私の手を取って蔵の外へ出た。

いつのまにか月が出ている。空との境界がぼんやりしていて定かでないうえに、いやに赤っぽい。

姉は、帰りにまた坂を登らんとあかんけどな、そんな難しいことやない、簡単なんやで。ほんまにほんまに全然難しいことないねんで。とも言った。



***



「な、簡単やろ。」

なまあたたかい風に白髪を蜘蛛の糸のようにふわふわと揺らして振り返り、水たまりをひょいとまたぐような気軽さでさっさと坂の上へと辿り着いた姉は、坂の下の私に笑いかけて、

「まあちゃんもはよ、おいで。」

うっすらと紅を引いた、ひび割れた地面のような唇を小さく開いて、自分の後に続くように促した。

坂は、荒い砂利がしきつめてあるのみで舗装がなされていない。坂の手前までは石畳がきっちりと敷かれているので、路地と坂との境界が明瞭にわかる。

くわえて、狭く細く、はじまりこそ緩やかな道であるものの、地面の下に岩か木の根でも埋まっているのか、中ほどから生き物のように激しく上下にうねっていて、かなり歩きにくくなっている。

さらに坂はその両側を、ぶあつい土塀に挟まれており、それは坂を過ぎても途切れることなく、だらだらと闇に吸い込まれるようにどこまでも延々と続いているのだが、問題は、その土塀にたてかけてある汚い立て看板だった。

雨ざらしになって薄汚れている上に、近所の子供の仕業だろう、「あほ」「うんこ」「しね」などの落書きで埋め尽くされた看板には、黄色の下地に黒い文字で


あわてるな 七回ころんだら ダメです
ころりん侍 出ます
PTA



とある。

この坂で七度ころぶと「ころりん侍」が出る。だから、決してあわててこの坂を通ってはいけない、という意味なのだと、書いてあるそのままのことを姉は、繰り返し繰り返し私に言い含めた。

子供でもあるまいに。

しかし、「ころりん侍」とはなんだ。マンガのキャラクターか何かだろうか。それに、なぜ転ばないよう気をつけるのではなく、「七回ころんだら」なのか。

どうもよくわからないが、別にわかったからといって何がどうだというわけでもないだろう。気にすることもない。

誰がこんな道で転ぶものかと馬鹿馬鹿しく思いながら右足を上げ、地面に置いたと同時に右足の乗っている地面がいきなりずる、と前方に滑った。

あ、と思って身体に今出した足をすぐに引っ込めるよう指令を送るが、身体の方はひっこみがつかないらしく、そのままどんどんと右足に重心を移動させてゆき、そのせいで地面はさらにぬるぬる前へ滑ってゆく。

右足と左足との距離がみるまに遠くなり「いたい、いたい」股が裂けそうになる。

そこで地面が急加速した、と感じた次の瞬間、しゅんっ、と地面は空中へ跳ね上がった。右足をのせたまま。

気がつくともう転んでいた。

尻を強打して顔をしかめる私の前に、天に舞い上がった地面が、ぼとりと落ちてくる。
地面ではなく、バナナの皮だった。

砂利の上に落ちた皮は、鮮やかな黄色とはまったく縁遠い代物で、たちのわるい皮膚病に罹患しているかのように黒と茶色の染みで覆われており、熟しすぎてもはや腐敗しているのが一目で分かった。めくれ返った皮の裏面からはバナナとはとても思い難い、赤みがかった乳白色の粘液が分泌しており、薄い膜を張ってぬらぬらと月光を照り返している。

どこにあった、こんなものが。

少なくとも姉が坂を上った時にはなかったはずだ。

尻をさすりながら立ち上がり顔を上げると、いつのまにか坂に、地表が埋まるほどの大量のバナナの皮が出現していた。

皮だけではなく、まだ中身のあるバナナもそこら中にごろごろと転がっており、私が坂を上ろうとする直前まではたしかにそんなものは一つもなかったのに、いったいどこから湧いて出たのだろう。

びっしりと坂を埋め尽くしたバナナの皮は、なんとなく岩に付着したフジツボやヒザラガイを思わせ、それらのバナナはすべてが、鮮やかな黄色とはまったく縁遠い代物で、どれもこれも真っ黒に腐敗していた。

バナナにそこまで強い匂いがあるはずもないが、これだけの量を目の前に突き付けられると、さすがに胸がむかつくほどしつこい香りが周囲に満ち満ちている気がしてくる。

しかし、いくら大量にあろうと所詮バナナなどバナナに過ぎない。踏まぬように気をつけて進めば、どうということがあるはずもない。それに、坂の下から上までは、距離にしてたった五メートルほどではないか。

二度も転ぶわけがないのだ。

と思った直後に、またしても転んだ。

二、三メートル進んだところでつるんと滑ると、背中から勢いよく大量のバナナの上へと叩き付けられ、シャツ越しにバナナの潰れて破裂する感触が「ぶちゅ、ぶちゅ」と音を伴って伝わってくる。もともと柔らかく、崩れやすいバナナという果物であるうえに、熟し、腐敗しているために余計に潰れやすいのである。

甘ったるい芳香を放つバナナの実や皮や汁にまみれ、全身どろどろになった。バナナシェイクの海に叩き落とされたような様相である。額に張りついた髪の毛の先端から滴った汁が、瞼から右の目の中へと滴り落ちて、さらに涙腺にまで侵入してきたり、なぜこんなに視界がくらく濁っているのだろうと思うと、熟しすぎたバナナの中でも茶色の半透明になった部分が左の眼球にべっとり張り付いているのであったり、耳の穴にはすり潰されてゲル状になったバナナの実が鼓膜へとどくまでぎっしり詰まっていて、鼓膜にこぽこぽノック音のようなものを直接響かせながらさらに奥へ流れ込もうとしていたり、鼻の穴に無理矢理どろどろと注ぎ込まれるバナナ汁に窒息しそうになってむせ返ったり、首筋にべったりと張り付いていたバナナの実の白い筋が、シャツの内側を首筋から背中へとゆっくり落ちて尻の穴やふとももの敏感な部分へと蜥蜴のように這っていったりといった、もろもろの気色悪さに私は小さく悲鳴を上げ、慌てて立ち上がろうとしたのだが、四つん這いになって手をつくと丁度そこにあった皮がつるんとすべり、つんのめった私はまた転んだ。

しかも顔面から、思いっきりバナナに突っ込んでしまった。

突っ込んできた顎と地面に圧迫され、その圧力によって内側からめりめりとはみ出したバナナの実が、皮の切れ目から幾筋も糸状になって噴出した。まるで肛門から垂れ下がるサナダムシのような形状になり、それらは宙へ跳び上がる。

跳び上がったサナダムシは顔面につぎつぎに張り付き、口腔内へと一斉に突入してミミズのようにのたくって強引に食道へと突進してきた。

あまりに予想外の動きに驚いて、私はバナナの侵入を押し止めようともが、もがともがきうめき、入ってきたバナナを必死で咀嚼したが、なんの抑止力にもならない。許容量を遥かに超えた量の嚥下を無理強いされ、私は喉を鳴らしてたまらずにえずくのだが、狂ったようにバナナはおかまいなしに押しかけて来る。

堪えきれずに嘔吐した。

半溶解した胃の内容物が残らず無数のバナナの上にぶちまけられ、酸っぱい臭いが口中に充満する。

しかし、それでもバナナは、噴出するゲロの流れの中を、滝を上る鯉さながらに威勢良く食道の肉壁に身をぶつけながらさかのぼり、胃の中へと侵入してくるのである。私はそれが収まるまで、これ以上バナナが入ってこないよう、自分の腕に噛み付いて口をふさぎながら、げえげえと唸って耐え続けるしかなかった。

のたくる大量のバナナに食道と気道を塞がれて、窒息死を寸前に迎えたころ、バナナのサナダムシの波は徐々に途切れ出し、ようやく収まった。

息を切らしながら、まだうようよと十数匹のバナナが這い回ってる顔にびっしょり掻いた冷や汗を、汁とよだれと吐瀉物にまみれた袖でぐいぐいと拭い去る。

目の端に涙が滲んでいた。

腹の内部で何かが痙攣しているのが分かる。

ぎっしりと詰め込まれた無数のバナナが、腹の中でびちびち蠢いている。そんな画像を思い浮かべ、ぞっとしてかぶりをふる。

とその時、

「こらぁ!」

しゃがれた怒鳴り声が耳に飛び込んできた。

えっ、と顔を上げると、坂の上から姉が

「あんた、まさか食べたんかぁ!」

皺だらけの翁面のような顔を歪め、ぼろぼろと泣いていた。

「あかんて言うたやろっ。あんた、あほか!」

そんなん言うたかって、ねえちゃん、

「あれは、」あれは、ほんでもねえちゃん、あのオバチャンがせっかく出してくれたんやから「身体が腐る薬やで!」

脳天がぐるんと裏返った気がした。

「あれ食べたらな」なんだそれは。

「坂が上れへんようになんねんでっ。なんで知らんのや、あんた」

なんじゃ、そら。知らん、俺は知らん。

知らんぞ、そんなこと。

聞いとらん。

「はよ、こっちまでおいで!はよ!」

姉が坂の上から手を伸ばしている。

唐突に私は「大きくなったら姉と結婚するのだ」という幼い頃の約束をようやく思い出して、そうだ俺は姉と結婚しなければならないのだ今までなにをしていたのだろう。

姉と結婚しなければという一心で、私はぐいぐいと腐って爛れたバナナの海を掻き分けて進み、姉の手を掴もうとしたのだが、途端、足首に力持ちの張り手を思いっきり食らったように足がつるんと滑って、一瞬全身が宙に浮いたのち、また背中から落ちて背中の下でバナナが「ぐちゅ、ぐちゅ」「ぶぴっ、ぶぴっ」

いまさら気にすることもない。

もう二本足で立つことも忘れ、獣のように四つん這いになって姉のところまで、どかどか這っていく。

のだが、膝は乳白色をした粘液のぬかるみに囚われ、岩を掴んだはずの両の手は粘ついた皮を握って、いくら踏ん張っても滑ってゆく力が抑えられない、ほらまた転んだ。

そしてもう何がなんだかわからないうちに、またしても身体が、つるん高く跳ね上り、空中で一回転して落下時にしこたまバナナで後頭部を打った。鉄の棒で殴られたように痛い頭を手でふれると、赤黒い血が大量に溢れだしているが、それよりも腹が立って仕方なかった。

バナナの皮と実と汁がないまぜになった海の中で、もはや私がバナナの中にいるのか、バナナが私を形作っているのか、全然分からないがそんなことはどうでもよく、とにかく私は早く姉と結婚しなければならないのである。

なのにこいつらはどうして私の邪魔ばかりするのだろう。

突然に生じた怒りが、電気のように全身を駆け抜けた。

気がつくと、ぎゃあぎゃあとB級映画の怪獣のように泣き喚きながら、私はバナナを無差別に踏み砕いていた。

踏み砕き、握りつぶし、叩き潰し、土塀に叩き付けた。

バナナのくせにっ。バナナのくせにっ。バナナのくせにっ。バナナのくせにっ。バナナのくせにっ。

果肉が飛び散る。皮が千切れる。指先でゆっくりと生皮を剥がれ、爪を立てて肉を抉られて、拷問のすえに死んだ罪人のようになる。

バナナのくせにっ。バナナのくせにっ。バナナのくせにっ。バナナのくせにっ。バナナのくせにっ。
バナナのくせにっ。バナナのくせにっ。バナナのくせにっ。バナナのくせにっ。バナナのくせにっ。

潰す、潰す、潰す。

ぐちゃ、ぐちゃ、ぐちゃ。

ぐちゃ、ぐちゃ、ぐちゃ。

死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね。

ぐちゃ、ぐちゃ、ぐちゃ。

ぐちゃ、ぐちゃ、ぐちゃ。

そして足を取られた転んだ。



      ***



七度目だった。



***



ころりん侍はなんの前触れもなく、空気から滲み出したように現れてすらりと抜刀し、正気に返った時にはもう私の右肩に刃を食い込ませていた。

侍は背中に月を負っていた。

空との境がおぼろげでいやに赤く、気味の悪い月だ。

ごろりとバナナの上に右腕がころがった。

続いて左の肩に激痛が走り、骨ごと一息に断ち切られた。

月光を反射してきんきんと切っ先がきらめく。

侍はまるでバナナの皮を剥くように、たやすく私の四肢を切り落としてゆく。

刀が振るわれるたび体に耐え難い激痛が走るのだが、私は、姉と結婚しなければ。そう約束したのだから。

なのに、なぜこの坂はそれを許さないのか。

理不尽である。不当である。

私も姉もそれを心から望んでいるというのに。

あまりにも身勝手ではないか。この坂は。

姉はどうしてこんなところに来たかったのだ。

瞬間、怒りとも恐れとも悲しみともつかぬ感情が怒涛のように押し寄せてきて、私は哭いた。



頭の中のどこかにあった扉が、初めて開いた。
涙とともに、いままで疑問に思うことを禁じられていた疑問が、奔流となって溢れ出す。



大きくなったら結婚しようと姉と約束を交わしたは、一体いつだったろう。

どうして私の後頭部からは、だらだらといつまでも血が止まらないのだろうか。いつから止まらないのだろうか。

バナナの皮に滑って茶箪笥に頭をぶつけたのは、本当に姉だったろうか。

姉と初めて出会ったのはいつ、どこでだったろうか。

私には姉とともに過ごした記憶があるだろうか。

私には確かに、姉がいただろうか。

いただろうか。

姉は。



***



侍の背後に広がる、ぼんやりと光る濃紺の空を見上げた。

もはや私には姉とは呼べない「姉」がそこにいた。

「姉」が月の下で、皺くちゃの顔を歪めぼろぼろと泣いている。

うっすらと紅を引いた、ひび割れた地面のような唇が、小さく動いた。

「………………」

「あっ。」

そして私は、私が坂の上を転げて、もがき、苦しんだことの答えを知った。また、これが「姉」との永遠の別れであることを知った。

侍が吠えた。「姉」と同じ唇の形で。

もはや私には姉とは呼べない「姉」なのだがそれでも私の私の私の蜃気楼のように美しい姉が、坂の上へと帰って行く。

振り返って悲しそうに笑った。

坂の下で黄色い脳漿を撒き散らしながら、私にはそれが無性に悲しく、また嬉しかった。



***



荒俣宏「と、これがTさんの体験した黄泉の国です。死後の世界は、本当にあるんですねぇ。」
大槻教授「はっはっはっはっ。」
大槻教授「そんなバナナ。」




[21] (削除)さすけ2002/05/19(Sun) 03:08



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