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投稿時間:1999/11/30(Tue) 00:07
投稿者名:詰めにくい
Eメール:CYL04647@nifty.com
タイトル:「春秋」


▼今からちょうど25年前に登場し,一時のブームとして消
え去るかと思われた紅茶キノコだが,今や手軽な健康法とし
てすっかり定着した感がある。砂糖を加えた紅茶に菌を入れ
て何日か置くとゼリーのように固まる。その上澄み液を一日
カップ一杯飲めばよい。現在はこの「元祖」紅茶キノコだけ
でなく,紅茶キノコエキス入りのガムやキャンディ,ドリン
ク剤なども発売されている。昨年発売された,缶入りの紅茶
キノコ入り紅茶は,自動販売機での売り上げがまたたくまに
茶類,コーヒー類に次ぐ第3位になった。

▼この紅茶キノコが世に知られるようになったのは,197
4年に出版された,中満須磨子さんの「紅茶キノコ健康法」
(地産出版)が出たのがきっかけである。当時は高度成長まっ
ただなか,まだベトナム戦争もまだ終結しておらず,キャン
ディーズやフォーリーブスが大人気だった。そう思うと隔世
の感があるが,それ以後25年,さまざまな健康法があらわ
れては消えたにもかかわらず,紅茶キノコだけが現在も生き
残り,親しまれているのは何が理由なのだろうか。

▼中満さんはこう語る。「私は本を売って儲けようなどとい
う不純な気持ちでなく,たくさんの人にこの安価で手軽な健
康法を知っていただきたい,ただその純粋な気持ちだけで紅
茶キノコを世に紹介しました。」紅茶キノコの後を追うよう
に登場したいろいろな健康法の書物に欠けていたのは,人の
ためになろうというこの純粋な気持ちではなかっただろうか。
金儲けは悪いことではないが,それをすべてに優先させると
人々はそれを鋭敏に感じ取り,敬遠する。紅茶キノコ以外の
健康法は,一時的にブームにはなってもすぐに敬遠され,忘
れ去られた。

▼さて,1999年の日本はどうであろうか。東海村でも新
幹線でも安全性よりも効率が優先され,商工ローンは借り手
を助けるどころか命を代償にしても返済を迫る。教育が悪い,
社会が悪い,いやマスコミが悪い,そうかもしれない。しか
しなにより重要なのは,我々ひとりひとりが,人のためにな
ろうという純粋な気持ちを取り戻すことではないだろうか。
紅茶キノコの与えてくれるものは,健康だけではないのだ。