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投稿時間:1999/11/29(Mon) 00:24
投稿者名:はなじろ
Eメール:QZY12241@nifty.com
タイトル: 【SM健康法もここまで】

  自ら虐待されることによって自分の居場所を確認し、精神的安定を得ると
 言う一風変わった健康法があることは、皆さんも一度は聞いたことがあると
 思う。今日はその現場に潜入取材させて頂いた。

  今日来たのは池袋の「くわくわランド」。その趣味の人には聖地とも言わ
 れている店だ。
  1Fはマットやゼリーなど関連グッズの売場なので、メインの2Fに入る。

  「うぎゃぁぁぁ!」
  「い・・・いつっ・・・あふぅん・・・」
  「女王様、もっと強く噛んで・・・あひっ!」

  こいつらバカ? しかし仕事だ、ちゃきちゃきインタビューでもかまして
 おこう。

  「オオクワの元気のバロメーターは噛む力。だからこうやって指を噛ませ
   て元気なのを選んでるんです。」
  「大歯型のノコギリクワガタは最高です! オオクワ? 内歯が1本しか
   無いから物足りなくて・・・」
  「メスですよ、メス! オスに噛まれたって痛いだけですが、メスに噛ま
   れると下手したら肉が裂けるんですよ?」


  そう、ここはクワガタ専門店。所狭しとクワケースが並んでいる。やるべき
 仕事を済ませると、子供の頃から久しく眠っていた「クワガタ飼育」の欲求が
 爆発した。


  吟味して59mmのオスと38mm、39mmのメス2頭を買う。壁に適切
 なオスとメスのサイズの表があったのでそれを参考にした。メス2頭を買った
 のは、店員によればメスが産卵準備に入って神経質になったころ、相手をされ
 ないオスがメスを噛み殺すのを防ぐのに役立つそうだからだ。

  1Fに降りて、エサの高蛋白配合ゼリー(クワガタなどは、水分が不足する
 と体内の脂肪を燃焼させてH2Oを得たり、産卵には大量の蛋白質を必用とす
 るので、栄養価の高いエサが好ましい)やマット(おがくずやおがくずを発酵
 させたもの。大手ペトショップで大々的に売られている○カン社製のマットは
 殺虫成分を含むため、こういった専門店では絶対に売られていない。逆に言う
 と、このマットが売られているかどうかで優良店か判断できる)などを買い求
 める。

  「味の素はそこのコンビニで売っています」

  クワガタの産卵誘発物質として有名なのがグルタミン酸である。クワガタは
 枯れ木に産卵するが、後述する理由により、グルタミン酸の含有量が多い材木
 が産卵場所として好まれる。グルタミン酸は牛肉に多く含まれるイノシン酸等
 と並ぶ、人間にとっての旨味成分であり、味の素は実は海草から抽出したグル
 タミン酸ナトリウムの塊(含有率95%)なのだ。これを桜やクヌギ等の材に
 染み込ませると、クワガタお気入りの産卵場所になる。


  数週間後、産卵木に産卵痕が目立ちだしたので、再びショップを訪れた。

  「幼虫はどうやって育てたら良いのでしょう?」
  「材飼育、マット飼育、菌糸瓶飼育なんかが一般的ですが・・・」

  クワガタ狂に言わせると、幼虫の育ちがその後の全てを左右すると言う。

  材飼育とは木材の塊に幼虫を放り込み、カンで羽化した頃を見計らって割り、
 成虫を取り出す方法だ。この場合、ワイルドでフェロモンもんもん、噛む力も
 強烈な成虫が出やすいが、生死の確認が全く出来ないと言う難点がある。コア
 なマニアは野生のパワーを追い求めて、この方法に走りがちだ。

  一方マット飼育は発酵させたおがくずの中で飼育する方法であり、専門家は
 これを最も好む。小麦粉やふすま等の添加剤によって、記録的に大型な個体が
 出る可能性がある上、温室育ちで従順な性格に育つため、Sとしての調教がた
 やすいからだ。

  菌糸瓶飼育は最もポピュラーな飼育法であり、ヒラタケやカワラタケの菌糸
 を蔓延らせたおがくずの中で飼う方法。クワガタの幼虫は共生菌に周囲の材を
 分解させてから栄養分を吸収する(その過程でグルタミン酸が生じるために、
 メス成虫はグルタミン酸を産卵適所の目印にするのだ)。この共生菌と白腐れ
 系の菌の相性が良いことを利用して、菌糸瓶飼育が始められたのである。
  但しこの場合、図体ばかり大きく、軟弱な、むしろMがちな成虫に陥りがち。


  私は迷わず菌糸瓶飼育を選択した。自分は、SMにクワガタを飼うつもりは
 無いのだ。

  「い、痛ぅ・・・」
  瓶に移しかえる途中、幼虫に噛まれた。
  その後も何度か噛まれているウチに・・・

  「やっぱ幼虫が一番だよ」

  心身共にリフレッシュした私を照らす朝日が、今の自分と昨日までの自分は
 違うんだ、と言っているように感じられた。(もう戻れないんだよ、とも・・)

                              は

  P.S.
   参考文献
    NIFTY:FKONCHU
    HTML:クワガタ狂の大馬鹿ものたち