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投稿時間:1999/11/23(Tue) 03:19
投稿者名:玄界灘男
Eメール:BYW02302@nifty.com
タイトル:ある健康法とは無縁の男の死

「まいったなぁ、こんなことならかみさんの言う通りにしとけば
 よかったなぁ・・・・。」

清潔なシーツにくるまれて、男は点滴の落ちる音を聴いていた。
男の脳裏には、毎晩の様に午前様になっていた泥酔の日々が浮か
んでは消えていった。そういえばあのころは食事らしい食事もし
なかった。二日酔いがいやで朝から呑んでいたこともあった。
「楽しみのあとには苦しみ・・・・か。」
半ば諦めにも似たため息が男の口から漏れる。

「煙草は一日に何本位吸いますか?」「ええ、2箱程。」・・・
医者とのやり取りでも「多い!」と言われた。もっともそんな事
はとうに承知、本当は4箱は吸っていた。それもハイライト。

「とりあえず何でも良かったんだ、健康法・・・・。」
妻が薦めてくれた「にんにく卵」「酢大豆」「紅茶キノコ」etc.
「あ〜あ。今ンなっちゃなぁ。これが本当の『後の祭り』だな。
 摂生すればもっと健康でいられたのかなぁ・・・・?でも飲尿
 療法なんていやだしなぁ・・・・。」
何となく胸が苦しくなってきた。周りが暗くなったような気もする。
ナースコールを押そうとして伸ばした手が途中で止まり、やがて
力なく落ちた。そして静寂・・・・・・・。

翌日の新聞に男の記事が載った。別段社会に貢献した訳でもなかっ
たが、割合に大きい記事だった。

「世界最高齢記録者 渡嘉敷鶴丸さん(124)亡くなる。」