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今月のベストセラー
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「鷲と桜 」 戦勝国と敗戦国。厳然と隔てる地位協定を越えた「もののふの心」とは
ドン、ドン、ドンドンドンドン… 「北町奉行 遠山左衛門尉様、御出座ァー」 「これより沖縄女性暴行事件について吟味いたす。一同の者、おもてを上げい」 「さてそのほう、在沖縄米空軍嘉手納飛行場ニ等軍曹、ティモシー・ウッドランドに相違ないな?」 「ヘエ、相違ゴザイマセン」 「調べによれば、六月二十九日に仲間と酒を飲んだ後、店の外にいた女をかどわかし手篭めにした。これにしかと相違ないか?」 「メメ滅相モゴザイマセン。オ奉行サマ、アッシハタダ、女ガ気分ガスグレナイトイウノデ、介抱シテイタダケデゴザイマス」 「濡れぎぬと申すか。では仲間の兵士をこれへ」 「ははぁ」 「この者らが見たと申しておるのだ。そのほう、それでもしらを切るつもりか?」 「ソイツラ俺ヲ売リヤガッタンダ。ソイツラノ言ウコトハ信用ナラネエ」 「おうおうおうおうっ、さっきから聞いてりゃがたがた抜かしやがって。 俺の目はごまかせても、この桜吹雪、見忘れたとは言わせねぇ。 目ん玉ひん剥いて、よおく見ろィ!」 「(オオ、コノ腕ノタトゥー、遊ビ人ノ金サン!アノ駐車場デ女ヲ助ケタ。モウ観念スルシカナイ) …アッシガ、ヤリマシタ」 「下手人、ティモシー・ウッドランド。 そのほう米国の軍人でありながら、こたびの所業は不届き千万、よって遠島を申し付ける。 引っ立ていっ!」 「ははぁ」 「これにて一件落着!」 かりゆしの 遠山桜 風清し 自白中心の日本流の捜査に当初引渡しに難色を示した国防総省も、それに抗議した市民や日本政府も、金さんさすがのお裁きに、梅雨の明けた空の如くどこまでも晴れ渡った心持ちであった。 出版物・雑誌 | 会社概要 | 主要取引先 (C)2008 CMOS Bookstore Co.,Ltd. All Rights Reserved. |