1999年7の月…
ぼくらのクラスでは少数の頭のいいヤツがこの詩を暗唱し、大半がこの詩の意味するところを知っていた。
そしてその何割かはそれを信じなかった。ぼくを含めて。
それはいったいどんな形で起こるのか、ぼくを納得させる答えが仲間からも世の中からも得ることはできなかった。
しかしそれは静かにぼくらの知らないところで実行に移されていたのだ。
3日、隣のクラスで死亡事故があった。上空から巨大なものが落ちてくる気配に逃げようとしたが間に合わなかったらしい。
7日、登下校中突風と共に有毒ガスを浴び、多くの仲間が死んでいった。父の話ではその有毒ガスは神経に影響を及ぼし、全身動かなくなるものなのだそう
だ。
10日、今まで見たこともない黒い雲が街を襲った。外に出ていたどんな生物も皆呼吸を止められ死んでいった。
その翌日から、雲が消えても光が射し込まず静寂が世界を包んだ。毎日が夜だった。
そして今日、滅亡の日はやってきた。
いつものように夕食を終えると、体の動きが鈍っているのに気が付いた。
そのうち意識までもうろうとしはじめてきた。
外では悲鳴を上げながら家を出てくる者たちであふれていた。
そしてそれはたちまち目を覆う光景に変わっていった。
他が店を閉めたため街に一軒だけ残っていた商店の品全部に毒が混ざっていたらしい。
ぼくももうすぐ死ぬだろう。やはりこの世は恐怖の大王が支配する世界だったのか…。
…恐怖の大王が現れる
アンゴルモアの大王を甦らせ
その前後の期間、マルスは幸福により支配するだろう…
「まあ!留守の間にゴキブリいなくなったみたいよ」
「このホウ酸ダンゴたいしたもんだな、ネーミングのセンスないけどさ」
「ほんと、これからは安心してバカンスに行けるわね」
[ FCOMEDYS嘘競演「恐怖の大王」('99/7)]