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｢ふぁー…あーあ…」
文具メーカーOL平野梢は、天気のいい昼休みに公園のベンチでお弁当を食べ、のんびり過ごすのが好きだ。
入社3年目。多くの仕事を任されるようになったものの、最近何をやるにしても動きが重く感じ、仕事に以前にはなかったストレスを感じるようになっていた。

読みかけのペーパーバックを閉じ、芽が紅くなってきた桜を眺めていると、隣の高校の門から賑やかなはしゃぎ声が聞こえてきた。

「あ、きょうは卒業式なんだ…」
証書の筒を手に看板の前で写真を撮るグループ。花束を持っている女性は担任の先生だろうか。
別れ難いのか門の周りには友達同士いくつも輪ができていた。

梢はいつしか自分の高校卒業式と光景を重ね合わせていた。

…入学してすぐできた友達に誘われて野球部のマネージャーになった。
同じクラスの村上君が2年生でエースになり、夏の大会からはキャプテンを務めることになった。
梢はそんな村上君を好きになっていた。

告白する勇気がないまま高3の夏、甲子園の県予選は準々決勝で敗退。
そして村上君は東京の大学に、梢は地元の短大にそれぞれ進学が決まり卒業を迎えた。

式が終わり、梢は勇気を出して村上君に告白した。返事は、「ごめん、俺好きな人いるから」だったっけ…。


「…隣、いいかな」
「あ、守田さん」
「どうしたんだお前、ぼーっとして」
困ったとき相談に乗ってくれる営業部の先輩、守田さんが外回りから戻る途中だった。

「守田さん、私…」
今度の卒業式はうまくいきますように、と梢は心で願った。



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