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「コンビニエンス業界 」
村野総合研究所 編
流通革命!日本人の生活、社会を変えたコンビニ業界を多方面から分析

    おでん専用農場

    コンビニエンスストアのおでん、その味の秘密は専用農場にあるという。それを探るべく我々はチェーン本部に問い合わせるが、やはりそのガードは固かった。
    しかしある契約農場のオーナーと接触を図ることができ、匿名を条件に取材させていただくことにした。

    関東某県。東北自動車道のICから国道、広域農道を進んで行ったところにその農場はあった。ここまで来ると関東平野もその広大さが実感できる。
    ご自宅にて奥様と待っていると、朝の仕事を終えタイヤから土を落としながらトラクターに乗ってオーナーが戻ってきた。
    日焼けした精悍な顔、しかし目尻の皺にどこか人懐っこさも感じられるオーナーは、「ほれ、これをかじってみなさい」と掘ったばかりという大根のスティックを皿にのせて差し出した。
    一口目でその味の奇妙さに気が付く。その表情を見て取ったオーナーに我々は次に納屋を案内された。

    納屋では高さ約3mで大人3人が腕を広げてやっと抱えられる程の金属の器に、モーターで回転する攪拌棒がぶら下がっており、ここで特別な堆肥を作るのだという。
    しかも通常使うような肥料は一切使用せず、粉砕した昆布、削り鰹を混ぜたものを使うのだ(配分量は秘密)。

    つまりあの大根の味は驚くべきことに「だし」が効いていたのである。

    さらにオーナーにお願いし、広大な農場を案内していただく。
    大根が中心だが、こんもりとした丘のまわりに様々な作物が見える。
    この地方の名産でもあるこんにゃく芋、豆腐や厚揚げ、がんもどきの材料となる大豆、さらに丘の向こう側は竹輪麩のための小麦畑だ。
    ゴボウ巻きのための牛蒡の大きな葉も青々とした姿を見せていた。そして林のわきにはんぺんに練り合わす山芋、ロールキャベツに使うキャベツもある。
    ジャガイモは煮くずれしにくいメークインとのこと。オーナー宅と近くを流れる川の間には水田があり、もち巾着のための餅米も作られている。

    次に卵を採るための養鶏場、当然おでん専用である。「だし巻き玉子も簡単に作れますのよ」と奥様。

    しかし、最後に案内された場所は思わず自分の目を疑う光景だった。
    製鉄会社がサイドビジネスで開発した小学校の体育館ほどの大きさのプラントの中では、水槽に練り物の材料となる海水魚、イカやタコが泳いでいたのである。

    まさにこれこそが「おでん専用農場」の全容であり、水槽からの鰹や昆布も含めておでんの全てはここで作られているのだ。

    今や10兆円といわれるコンビニ業界の市場規模。激化するチェーン間の競争を支えるのはこうした生産者を巻き込んだ徹底的な差別化だったのである。


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