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「人道の処方箋 」
村上 武吉著
人間として多くの人間を救った医師の奇跡の偉業
    ニューヨーク郊外、ウェストチェスターの診療所。
    さほど広くない待合室は、もはやソファーに座りきれないほど患者が増えていた。

    世界経済の中心地でビジネスを行う日系企業の駐在員。生まれ育った国とは言葉も文化も違う。
    当然ストレスと無縁ではない。
    開業医Dr.スギハラはそんな彼らの良き相談相手であり、何より日本語で話せることが心強かった。

    きっかけはある患者が訴えたストレスによる症状だった。
    Dr.スギハラはファイザー社が開発し認可されたばかりの新薬を処方することにした。
    この効果は驚くべきもので、患者のビジネスへの自信回復にも役立ったのである。

    狭い日系社会のこと、噂はすぐ広がり同じ症状を訴える患者が多く診療所に訪れるようになった。
    Dr.スギハラは彼らの悩みを聞き、処方箋を書き続けた。

    全米のマスコミは新薬をセンセーショナルに報道した。多くは興味本位だった。
    薬の本来の目的を外れ、イメージだけが一人歩きを始めていた。

    薬を買うのに必要な処方箋を求めて人が殺到し始めた。にわかに患者になった者も増えた。
    Dr.スギハラはそれを訝る素振りも見せず、処方箋を書き続けた。

    日本に飛び火するのに時間は要らなかった。

    診療所の前に観光バスが停まるようになった。同じワッペンを付けた中年や初老の団体が降りて来た。
    Dr.スギハラは出発するバスの窓から差し出される手一つ一つに渡し終えるまで、処方箋を書き続けた。

    救世主、反逆者...どんな毀誉褒貶も彼にはどこ吹く風だった。
    Dr.スギハラは私にこう話したことがある。
    「それがどんな人間であっても、救いを求めて訪れる人を私は拒むことが出来なかったのです」

    薬を服用し命を落とした者もあるだろう。しかし多くの者が自由を、誇りを取り戻した。そして子孫を残すことができた。
    人道の処方箋によって。

    [NIFTY-SERVE FCOMEDYG 一部改訂('98/8)]


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