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「人道の処方箋 」 村上 武吉著 人間として多くの人間を救った医師の奇跡の偉業
さほど広くない待合室は、もはやソファーに座りきれないほど患者が増えていた。 世界経済の中心地でビジネスを行う日系企業の駐在員。生まれ育った国とは言葉も文化も違う。
きっかけはある患者が訴えたストレスによる症状だった。
狭い日系社会のこと、噂はすぐ広がり同じ症状を訴える患者が多く診療所に訪れるようになった。
全米のマスコミは新薬をセンセーショナルに報道した。多くは興味本位だった。
薬を買うのに必要な処方箋を求めて人が殺到し始めた。にわかに患者になった者も増えた。
日本に飛び火するのに時間は要らなかった。 診療所の前に観光バスが停まるようになった。同じワッペンを付けた中年や初老の団体が降りて来た。
救世主、反逆者...どんな毀誉褒貶も彼にはどこ吹く風だった。
薬を服用し命を落とした者もあるだろう。しかし多くの者が自由を、誇りを取り戻した。そして子孫を残すことができた。
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